八戸准看護学院第57回卒業証書授与式

 学院長は式辞で、初心忘るべからずという言葉を述べました。この意味は「初めの志や純粋な気持ちを忘れずに、ひたむきに物事に取り組みなさい」と知られていますが、真の意味は異なります。
 この言葉は室町時代に能を大成させた世阿弥が残しました。世阿弥が著した『花鏡』という本に「初心不レ可レ忘に3か条の言い伝えあり」と記されています。その3か条には「是非の初心忘るべからず、時々の初心忘るべからず、老後の初心忘るべからず」と3つあります。
 世阿弥が残した初心とは「始めた頃の気持ちや志」ではなく「修行を始めたころの芸の未熟さ」「初心者の頃のみっともなさ」が本当の意味です。「あのみじめな状態には戻りたくない」と思うことでさらに精進し、能の技術を高めるということを述べているのです。
「時々の初心忘るべからず」は芸を始めた若いときのみならずその後修行のどの段階においても人は未熟さを持っており、「老後の初心忘るべからず」は老後に及んだ後も老境に入った時の初心の芸を忘るべからずと説いています。つまり物事を成就した後にも直面する壁や試練があり、その壁を乗り越えた経験はその後の芸の向上に資するという意味です。
 皆さんは本学院での学業を終了し、本日卒業という節目を迎えました。看護師になるべく最初の看護学修得という芸は極めましたが、世阿弥が説くように今の段階においても、またこれからのどの段階においても未熟さは持っています。皆さんは初心忘るべからずの言葉を肝に銘じ、今後も精進し看護学を追い求めなくてはなりませんと述べました。



 

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