「子供の整形外科的疾患について」

本田整形外科クリニック 本田忠


本日は子供の整形外科疾患について、ざっとお話します。お子さんの場合成長
途中ですので1年間に10cmも伸びることも多く、大人ではおきないような
合併症や、また子供にしかない特殊な病気もあります。今回は比較的頻度の高
い疾患についてお話します。

斜頚
生まれたときに、顔が片方しか向かず、どちらか一方に傾いて頭がいびつに
なってくる病気。頚部の前面の胸鎖乳突筋という筋が硬くなっているのが原因
です。
治療はできるだけ早く連れて行くことです。生後3週間以内が理想的です。
幸い自然治癒が多く、日常生活の注意だけで8割はなおります。日常生活の注
意は健診センターで三ヶ月健診でチェックしたときにお母さんにパンフレット
を渡すようにしました。保健婦さんにお聞きください。

肩関節脱臼
子供の怪我で結構多いものです。これは比較的簡単に整復すればなおりますが
大切なのはそのあとです。痛くないので、そのまま受診しない方が良くいます。
きちんと3週間固定しないと、習慣性肩関節脱臼に移行します。こうなると手
術することが多くなります。

上腕骨顆上骨折
これは肘の骨折です。上腕骨の下端の骨折です。この骨折は比較的多いのです
が同時に合併症も結構多い骨折です。まず骨折直後は血管や神経を巻き込んだ
り、腫れが非常に強い骨折です。血管損傷や腫れが強いと前腕が壊死になった
り、指の拘縮が起こることがあります。またきちんと骨癒合がえられても、成
長とともに内反肘や外反肘になることがあります。ひどいときは成長終了時に
補正手術が必要なこともまれにあります。定期的に受診なさることが必要です

肘内障
乱暴に両親が4-5歳以下のお子さんの手を引っ張ると、子供は筋力が弱いの
で簡単に肘関節の亜脱臼を起こします。手を動かさなくなるのですぐ分かりま
す。
簡単に整復できますが、瀕回に起こるようだと、幼児虐待も考えなくてはいけ
なくなります

子供の骨折は見逃しやすい
子供の骨は大人の骨とだいぶ違いますので、レントゲンで取っても良く分から
ないことがあります。これは意思疎通が十分でないこともありますが多くは以
下の解剖学的事由です

若木骨折
11歳以下ぐらいの子供の骨折は大人と違って、非常に柔らかいので、折れ方
も特殊です。竹が折れるような折れ方をします。これは骨折線が皺のようにな
ります非常にみずらい骨折線です。逆にいえば11歳以上は強度的には大人の
骨になるということですね。また骨の両端には骨端線といって骨が成長するた
めの軟骨のラインがあります。ここで折れると骨端線離開となります。軟骨は
レントゲンでは見えませんので、これも転位がないと折れているかどうか判断
できないことがあります。

なんでもそうですが経過観察といってなんどでも見ることが大切です。最初の
レントゲンで何ともないといわれても、2-3週たってやっぱり折れていたと
いうことは良くあります

きちんとお医者さんのいうとおり受診して、2〜3週たっても痛がることをき
ちんと伝えてください。子供の骨が特殊なためやむをえないことです。

側弯症
学校健診で、定期的にチェックします。診察のみでよく判定できます。精査が
必要となれば学校から連絡がいきます。お近くの整形外科を受診ください。レ
ントゲンで診断します。治療は運動と、装具療法と、手術があります。大体1
5歳ぐらいで進行はとまります。県内で手術まで至る例はきわめてまれです。
大部分は経過観察で十分です。きちんと医師のいうとおり、定期的に医院を受
診すること。また積極的に運動なさってください。長期の観察を要するときは
市内でははまなす学園で行います。医師が誘導しますので受診は整形外科なら
どこでも結構です。


先天性股関節脱臼
3ヶ月検診はかならず受けましょう。臼蓋形成不全と先天性股関節脱臼という
2種類の病気に別れます。
臼蓋形成不全は、股関節をつくる腸骨の屋根の部分のできかたが不十分で臼が
浅いものです。脱臼はしていない。
脱臼は屋根の出来も不十分で、股関節が脱臼しているものです。
市内の発生率は1%ぐらいで、毎年市内で10人ぐらい治療を受けていますお
むつのあて方とかでだいぶん予防できます。日常生活の注意は三ヶ月健診で同
じく保健婦さんからいただけます。教育もされます。

治療は脱臼の場合はリーメンビューゲルというあぶみバンドを2ヶ月程度つけ
ます。これだけで8割は整復されます。手術は県内で年間1例ぐらいです。
大切なことはこれはきちんと整復されても一生の病気ですので、きちんとお医
者さんの指示通り病院を1年おきとか定期的に受診してレントゲンを取ってく
ださい。

内反膝、内反下腿
よくO脚を心配してくるお母さんがいます。大部分は4-5歳で目立たなくな
ります。したがってあまり気にしなくて結構です。程度がひどいときは足の装
具を作ります。手術まで至ることはほとんどありません。お近くの整形外科を
受診なさりよくご相談ください

成長痛
4-5歳ぐらいのお子さんが、ぶつけたとか、思い当たる原因がないのに寝入
りばなや一晩中足や膝が痛いと泣いたり、ぐずるときがあります。しかも一晩
中泣き叫んでも、朝は元気で機嫌も良い。夜になれば又痛がる。これは多くは
成長痛です。

これは成長するときにいたむわけではありません。名前が悪いので成長期の子
供に多い病気なのでそうなずけられたものです

原因は甘えです。妹や弟ができたとか、お母さんが働きにいったとか、家庭環
境の変化があったときに良く発生します。こちらを向いて欲しいというサイン
ですから良くいたむところをなでたり、スキンシップに努力してください。も
ちろん、骨折やその他の病気が原因であることもありえます。症状が続くよう
ならお近くの整形外科を受診ください

内反足
生下時から足が内方、下方を向いているものです。治療が必要なほどひどいの
はまれですが、程度がひどいときは、できるだけ早く整形外科を受診なさり治
療を受けることです。ギプスや装具を使用します。

奇形や脳性麻痺
これは小児科や整形外科の協力で行いますが、市内でははまなす学園で治療を
含めた経過観察を行っています。


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