「病理とは」

八戸市立市民病院 方山 揚誠


Q1:病理と言う科はあまり聞いたことがありませんが何をする科でしょうか?

A1:病理の医師は患者さんと直接会うことは事はほとんどありません。普通
の医師は患者さんを相手にしますが、病理の医師(病理医)は医師を相手にし
ています。病理の仕事は3つあります。組織診断、細胞診、病理解剖です。

 患者さんより検査で採取された検査材料(胃カメラなら胃粘膜の一部で米粒
より小さなものです。)を顕微鏡を覗いて細胞の形やその並び方を観察して癌
か否かの判断を下しています。この事を組織診断と言っています。内科の医師
はこの病理医の下した診断に基づいて治療方針を決めて行きます。結局内科の
医師が胃を内視鏡で観察して適切な部位を採取し、その材料を病理医が顕微鏡
で判定するわけで、内科医と病理医で共同で診断している事になります。手術
中も迅速凍結切片法と言って15分程度で顕微鏡標本を作り直ちに判定し、執
刀医に連絡して癌の詳しい性質を伝え、また切り取った範囲が適切かの判定を
します。

 切り取った材料の端まで癌があれば更に追加して切り取ってもらい癌を残さ
ないようにします。更に手術で切り取った標本を後で詳しく調べて、癌の広が
り具合を診断します。これによって外科医は治療方針を決めます。内科や外科
だけでなく、癌を扱う科にとって病理診断は必須の検査で、病理診断がないと
学問的には癌の証拠がないことになります。

 2つ目の細胞診とは細胞をガラスに塗って顕微鏡で診断する領域です。子宮
癌検診の細胞診や肺癌検診の喀痰細胞診も顕微鏡で判定するのは、病理以外の
医師も行いますが、病理の医師も行います。この検査も主に癌細胞やまだ癌と
は言えない異常細胞を判定します。

 3つ目の病理解剖ですが、患者さんが病気で亡くなった場合の解剖で診断や
治療が適切であったかを確認します。末期の癌の患者さんは末期の時は十分な
検査ができないので、死亡時点での癌の広がり具合を確認したりします。この
ような病理解剖によって医師の知識が増え、次の同じような患者さんの治療に
解剖で得られた知識が役立つのです。

 一般に病理解剖をたくさん施行している病院は診療レベルが高いといわれて
います。

 八戸市立市民病院では年間約60例の解剖を行っています。

Q:2 病理解剖と言う言葉がでましたが、その他の解剖もあるのですか?

A:2 解剖には4種類あります。大学医学部で学生が人体の正常な状態を勉
強するための解剖を系統解剖と言います。犯罪に関係ある場合の解剖は司法解
剖あるいは法医解剖と言います。食中毒の疑いのある時の解剖は行政解剖とい
います。病院の病理医がおこなうのは病死した患者さんの病理解剖だけです。

 余談になりますが、亡くなった後、大学に系統解剖のために死後自分の遺体
を提供希望する方がおられます。八戸では大学医学部や医科大学がないので、
八戸市立市民病院にこの件に対する問い合わせの電話もありますが、その時は
病理医が応対して説明しています。このパンフレットや申し込み用紙も八戸市
立市民病院の病理検査室にあります。

Q:3 病理の医師はどこにいるのですか?

A:3 大学の病理学教室や大学病院の病理部、大きな病院の病理検査室にい
ます。八戸では病理医としての常勤医師がいるのは現在は八戸市立市民病院だ
けです。青森労災病院、八戸赤十字病院や八戸市医師会臨床検査センターでは
大学より非常勤の病理医が定期的にきて病理診断をしています。

 また、国立療養所八戸病院では病理の経験豊富な医師が内科と病理を兼務し
ています。診療所や規模の小さな病院には病理医はいませんので、これらの施
設で病理診断が必要な時は八戸市医師会臨床検査センターなどに病理検査を依
頼します。

Q 病院にとって病理医のいることはメリットがあるのですか?

A 手術中の迅速凍結切片法や病理解剖は病理医のいる病院のほうがやりやす
いです。
 また、病院内に病理がいると他の科の医師と直接患者さんの病気について話
合う事ができ、病理医と他の科の医師との連携がスムーズにいきます。


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