「糖尿病とはどのような病気ですか?」

中園内科クリニック 中園  誠


Q:1 
 最近、よくテレビや新聞などで糖尿病のことが取り上げられますが、糖尿病
の患者さんはどれ位いるのでしょぅか?

A:1 
 正確なことはわかりませんが、昨年厚生省が発表した報告では、糖尿病が強
く疑われる人が690万人、可能性を否定できない人をあわせると、1370
万人という結果が出ています。つまり、成人の7人に1人は糖尿病の可能性が
あるわけです。

 また、96年におこなった厚生省の患者調査では、治療中の糖尿病患者は
218万人ということです。つまり先程の690万人がすべて患者と仮定すれ
ば、約3割の人々しか治療を受けていないことになります。

Q:2 
 なぜこのように糖尿病の患者さんが増えてきたのでしょうか?

A:2
 糖尿病の発病の原因には親から受け継いだ体質、遺伝が関係していると言わ
れますが、実際に発病するにはその引き金になる食べ過ぎ、運動不足、ストレ
スが重要です。事実、わが国の患者数は自動車台数と平行するように増えてい
ますし、食事の中の脂肪摂取量の増加とも平行しています。つまり、わが国で
糖尿病の患者さんが増えた原因としては、車社会となって体をあまり動かさな
くなったこと、食生活が欧米化して摂取カロリーが増えてきたこと、さらに仕
事などで毎日を忙しくおくる人々が増えてストレスの多い世の中になったこと
などが挙げられます。

Q:3
 では、糖尿病はどのようにして起こるものでしょうか?

A:3 
 我々が摂取した食物の中の炭水化物は、まず血液の中に入ってブドウ糖とし
て存在します。ところで人間の体は60兆個もの細胞によって構成されていま
すが、血液中のブドウ糖はその細胞の中に入ってエネルギー源として用いられ
ます。そして、血液中のブドウ糖をスムースに細胞に取り込ませ、エネルギー
源として円滑に利用できるように働いているのがインスリンなのです。

 自動車に例えて話してみますと、ブドウ糖は自動車のガソリンに当たり、イ
ンスリンはガソリンがエンジンでうまく燃えて車を動かすのに必要な潤滑剤に
当たります。なお、インスリンは、胃袋のちょうど後ろにある膵臓から分泌さ
れるホルモンの一種です。

 さて、糖尿病はこのインスリンがうまく働いてくれずに、血液のブドウ糖が
細胞のエネルギー源としてうまく利用できなくなった状態です。そのため血液
中のブドウ糖すなわち血糖値が上昇し、肝心の細胞はエネルギー不足となり疲
れやすくなるわけです。

Q:4
 糖尿病はこわい病気だ、と言われますが、体にどのような障害を起こすので
しょうか?

A:4
 糖尿病は始めのうちは痛くもかゆくもない病気ですが、10年以上たつとさ
まざまな合併症が出てきます。主な合併症として、目の病気である網膜症、腎
障害および手足の神経障害があります。ここで注意すべき点は、目の病気や腎
臓の障害は程度がかなり進まないと症状が現れにくいと言うことです。網膜症
の症状として視力障害が出てきますし、腎障害の症状としてはむくみや高血圧
、貧血が出現します。従って、糖尿病の人は内科に行くと共に必ず眼科も受診
しましょう。そのほかに、バイ菌に負けやすくなり風邪が治りにくくなったり、
水虫や虫歯が悪化したりします。また脳卒中や心筋梗塞なども3倍ほど多く発
生します。

Q:5
 それでは、糖尿病の治療はどのように行えばよいでしょうか?

A:5
 糖尿病の治療には、食事療法、運動療法および薬物療法があります。薬物療
法には、内服薬かインスリンを用いる2つの方法があります。強調したいこと
は、治療の基本は食事療法と運動療法であるということです。いくら良い薬や
インスリンを使って治療しても、土台である食事や運動療法がうまく行かなけ
れば、きちんとした治療は出来ないと言うことです。食事療法には3つの原則
がありまして、適正なカロリーを取ること、バランス良く食べること、規則正
しく食べることです。1日3回の食事を、食堂の定食のように、主食、主菜、
副菜といった形で腹8分目食べるのが最もよろしいと思います。

 規則正しい生活を送り、標準体重を維持するようにしましょう。

 睡眠と休息は十分に取り、身体を清潔に保ちましょう。

 糖尿病が疑われる、あるいは糖尿病と言われたら、必ず医療機関を受診しま
しょう。そして、定期的な通院を続けて下さい。


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