「めまい」

村上耳鼻咽喉科医院 村上 裕


Q45才の女性です。
2日前に突然天井が回転する様なめまいがし、そのめまいは1時間くらいでよ
くなってきたのですが、それとともに右耳がよく聞こえなくなった様な気がし
ます。そういえば、同じ様なめまいが3か月前にもあったのですが、めまいと
難聴は関係がありますか。耳が原因でめまいがすることがあるのですか。

A耳の機能には音を聴くという聴覚機能と体のバランスを保つという平衡機能
の2つの機能があります。従って何らかの原因により耳の少なくとも片方の平
衡機能に異常が出現する結果、めまいという症状が発生することがあります。     
平衡感覚に関わる器官の代表は、脳、特に小脳・脳幹という中枢神経系や、視
覚及び内耳などがあげられます。
この内耳には聴覚系の神経につながる蝸牛と平衡覚系の神経につながる前庭・
3半規管というものがあります。
これらの受容体は、リンパ液という液体の中に存在し、リンパ液の流れの変化
によって平衡感覚に関する情報を中枢に伝達する仕組みになっています。

Q一口にめまいといっても症状はその人により様々だと思いますが・・・。

A患者さんにお話を伺ってみると、体がフワフワと浮いた様だとか、目の前が
一瞬真っ暗になるとか、周囲がグルグル回る様だとか、その人により、それこ
そ様々です。 
実際めまいはよく見られる症状ですが、患者さんにとっては大問題でかなり不
安に思われ、またそのこともあってか、めまい発作が起きた時の状況をうまく
相手に伝えることができず、よりいっそう不安がつのる様です。

めまいを起こす原因はたくさんありますが、残念ながらめまいの性質だけから
原因を特定することは仲々困難です。そこで、めまいの他に随伴する症状がな
いか。

例えば、頭痛がする、耳鳴りがする、体がしびれる等の症状を参考に総合的な
検査を受けることが必要です。

Q特に注意すべきめまいはどの様なものでしょう。

Aめまいの際に
1.意識障害がある
2.手足の麻痺・痙攣、あるいは舌がもつれる様な感じ
3.激しい頭痛、胸部の痛みがある

この様な時は、いたずらに体位を変換せず安静にし、すぐに高次医療機関を受
診して下さい。

Q耳が原因となっているめまいの特徴を教えて下さい。

A中枢性のめまいと比較して、末梢性(内耳性)のめまいの特徴は、症状の発
現が発作性で、強い回転性のめまいが発生し、嘔気・嘔吐といった自律神経症
状を伴います。又、病気の種類によっては、耳鳴り・難聴といった蝸牛症状を
合併します。

代表的な疾患としてメニエル病があります。この疾患の特徴は、突然に激しい
回転性のめまいがおこり、それに難聴・耳鳴り等が伴います。

めまい発作は、普通1日程で改善し、それとともに難聴も改善しますが、こう
いった発作は繰り返し起こりその都度聴力も変動します。

御質問された方の場合、専門医にて少しめまいの変化や、聴力の経過をみても
らうことにより診断は確実なものとなるでしょう。

メニエル病の原因は不明ですが、内耳に内リンパ水腫という病態があることが
特徴とされています。

治療ですが、めまい発作時には、患者さんに最も楽だと感じる体位をとらせ、
体位の急激な変換を避ける様にします。その上で鎮暈薬や、消化器症状を伴う
時は制吐剤を使用します。また内リンパ水腫を軽減させる目的で、利尿薬やス
テロイド剤を使用することもあります。

メニエル病は、めまい発作の誘因として不眠やストレスなどがあげられ、また
めまい発作を繰り返すことにより悪化した聴力が改善し難くなる傾向がある様
です。

従って、めまい発作の予防に留意されることが大切です。特に睡眠不足やスト
レスを避け、飲酒・喫煙はその節度を守り、規則正しい生活を送るように務め
ることが必要です。

Qメニエル病以外に、耳が原因でめまいが発生する病気はありますか。

A他の疾患として、突発性難聴にも回転性のめまいを合併することがあります。
しかし、メニエル病の様にめまい発作を繰り返すことはまずありません。
耳鼻咽喉科の外来にて、比較的多くみられる疾患として良性発作性頭位眩暈症
(BPPV)というものがあります。これは、頭や体をある一定の位置に移動
させた時に起こるめまいで、難聴・耳鳴りといった症状は伴いません。

原因は前庭にある耳石が後半規管に篏頓する為といわれています。
注意すべき耳鼻科領域の疾患として聴神経腫瘍があります。これは内耳道に発
生する腫瘍で、初発症時はめまいよりはむしろ耳鳴りや難聴です。

めまいの性質も回転性よりは、むしろフワフワ感が多く、病気の進行と共に歩
行障害などの症状が加わってきます。
病巣の位置・大きさによっては、手術により治癒も期待できます。

Q乗り物酔いや、立ちくらみは耳と関係がありますか。

Aいわゆる乗り物酔いは、動揺病や加速度病と言われていますが、体に、方向
や強さが不規則な加速度という刺激が加わることにより、耳ばかりでなく、目
・筋肉・腱から得た情報に対し、どの様に対応してよいか、感覚混乱をおこし
ている状態と言われています。

一方、立ちくらみと言うのは、起立性低血圧症と言って急に立ち上がった際に、
一過性の血圧低下によっておこることが多いのですが、椎骨脳底動脈循環不全
の様に、一過性の脳虚血発作を起こした時にもみられますので、やはり専門医
に相談された方がよいでしょう。


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