「肺気腫症と喫煙について」

坂本内科クリニック 坂本 良明


今日は、肺気腫症と喫煙についてお話したいと思います。

肺気腫症の患者さんの大部分は中年以上の男性です。肺気腫症は慢性閉塞性肺
疾患に含まれます。

WHOによりますと、この慢性閉塞性肺疾患は、今から約10年前の1990
年には死亡原因の12位でした。ところが、2020年には第5位に上がる見
込みです。ちなみに第1位は、虚血性心疾患、第2位は脳血管障害です。死亡
原因が急上昇する最大の理由は煙草を吸う事にあるとされています。

先進国では、喫煙人口はどんどん減少していますが、世界的にみると煙草を吸
う人たちはますます増えていくそうです。

さて、肺の機能ですが、大気中の酸素を取り込んで不要になった二酸化炭素を
体外に排出します。気管は左右の気管支に分かれ、どんどん細かく短く分かれ、
ついには終末細気管支になります。終末細気管支より末梢は、呼吸細気管支と
呼ばれ、その末端に肺胞を形成します。この呼吸細気管支から肺胞で、肺本来
のガス交換が行われます。

肺気腫症は肺胞壁の破壊と呼吸細気管支以下の気腔の異常拡張を特徴とす疾患
です。異常拡張の結果、肺は過膨脹となりガス交換がスム−ズに行われなくな
ります。症状は息切れないしは呼吸困難です。はじめは安静時には自覚せず、
階段や坂道を登る時自覚する程度ですが、症状が進むと、平地でも健常者と同
じ速度では歩行できなくなり、休み休みしなければ歩けなくなります。

さらに進行すると話をしたり着替えの際にも呼吸困難となります。咳や痰は、
しばしば認められますが、これは喫煙によるものでしす。病気の原因は不明で
すが、喫煙本数と強い相関が認められています。

治療により治ることはありませんが、症状を和らげたり、疾患の進行を遅らせ
ることができます。第1に、喫煙指導と栄養管理です。第2に、呼吸リハビリ
テ−ションとして腹式呼吸、口すぼめ呼吸、運動トレ−ニング等があります。
第3に薬物療法として、気管支拡張剤、抗コリン剤、ステロイド剤等がありま
す。第4に、低酸素血症に対して酸素投与が行われます。第5に、外科的治療
も行われます。

経過と予後。一般に慢性の経過をたどり、予後は必ずしも悪くありません。


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