「アトピー性皮膚炎について」

北村皮膚科 北村 英彦


アトピー体質をもつ人に起こる慢性の湿疹皮膚炎を、アトピー性皮膚炎(以下
アトピーと呼ぶ。)という。

一般に乳児より発疹が頭部顔面に発生し、成長につれて肘や膝の曲がる部分に
よく認められ、強いかゆみを伴う。乳児湿疹のみで治ってしまう場合が多いが、
中学生ぐらいまで続くことも少なくない。青年期まで続く場合には、成人型ア
トピーと呼ばれ、赤ら顔、頚のさざ波のような色素沈着を起こすことが多く、
問題になっている。

原因については、まだ分かっていない。アトピーの患者は「アトピー体質」と
「バリアーのこわれた乾燥した皮膚」を持っている。アトピー体質にアレルゲ
ンが加わると、皮膚にアレルギー反応を起こす。

又、皮膚のバリアーが、傷害され、過敏になっているので、「汗やストレス」
等でも簡単に症状が悪くなる。アトピーと診断する時の基準が、人によって必
ずしも一致するものではなく、仲々正確な統計はとりにくい。発疹の分布は乳
児では、頭、顔にはじまり、しだいに全身に拡がっていく。乳児から小児の頃
は、肘や膝の曲がる部位に発疹が見られる。

思春期、成人期では、上半身に認められる傾向がある。本人又は家族に気管支
喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピーの人がいないかどうか。

又、肌は長十郎の梨の皮や鳥肌状態が認められる。治療は薬のみならず、環境
整備や生活スタイルの改善など、自らが総合的に行なっていく必要がある。

まず、かゆみを止めることが第一。それにはステロイドの入った塗り薬が主流
で、年令、部位、症状に応じて使い分けること。日常生活上で特に注意するこ
とは、特に子供のアトピーにはまず、母親の理解と協力が必要。

又、毎日のスキンケアを怠らぬこと。肌を清潔に、それには入浴が最適。強く
こすらずに柔らかい綿、ガーゼや手のひらで洗うこと。ジュウタン、カーペッ
トは掃除機で。又、換気も充分に。

ペットの毛や羽根はよくない。寝具は日光で乾かし、よくたたいた上で表面を
掃除機で十分吸うこと。爪は短く。食事アレルギーが原因のアトピーはそんな
に多くないいわれているので、過激な食事制限は、子供の身体の成長や脳の発
達を妨げる。

最近過度のマスコミ報道によるステロイド恐怖症の人達が多いようだが、医師
の正しい指導のもとに使っている限り安心である。

アトピーを治すためには、家族が一緒になり本人の精神的、肉体的苦痛を取り
除いてやることが必要。それには、塗り薬による治療と、生活環境の改善を含
む、スキンケアの二本立てで、アトピーのかかえる諸問題をクリアすべきであ
る。


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