「川崎病について」


とみもと小児科クリニック 富本 和彦


Q1.川崎病って何ですか

A1.1967年に日本の川崎富作先生が発表した病気で、この人の名前をとって川
崎病といいます。当時、原因不明の熱を出して入院した子が自然に直って一時
は退院したものあるとき突然死をしてしまった。なぜかわからないというので
解剖して調べてみたら、大人のような心筋梗塞を起こしている、心臓を栄養し
ている冠動脈というところが瘤のように拡がっていて中に血の塊ができていた
・・・というところからちょっと特殊な病気だとされました。

Q2.どんな症状をきたすのですか

A2.いまだにはっきりした原因が掴みきれていないことからほかの病気のよう
に“OOO菌が検出されたから000病”といった診断にはなっていません。
主にその子どもの症状から診断されます。

1.高い熱が5日以上続いて、
2.両方の手が赤く腫れて、やがて2週間位すると指先から皮が剥けはじめて、
3.のどと唇が真っ赤になり、舌がいちごのように赤くプツプツになって、
4.体にいろんな形の赤いまだらな模様ができて
5.両目が赤くなり、
6.首のリンパ節が腫れたもの

Q3.原因は何ですか

A3.もともと川崎病は症状が溶連菌感染症に似通っていることから溶連菌との
かかわりが古くからいわれてきました。最近になって溶連菌そのものではなく
溶連菌の出す毒素・・スーパ一抗原がその原因ではないかとの説が発表されま
したが、いまだ定説にはなっていません。ただ、原因は不明ではあるもののそ
の病態はかなり解明されており、本質は全身の血管炎だと考えられています。
つまり、皮膚に血管が炎症を起こせば、赤いまだら模様ができ、眼の血管が炎
症を起こせば、赤く充血します。一般には炎症を起こした場合、たとえば風邪
を引けばおとなしく寝ていなさい、といいます。スポーツで色んなところを痛
めたときには固定して動かさないようにします。つまり、炎症は安静にするこ
とである程度落ち着いていくのです。川崎病の血管炎も安静にすることで自然
に落ち着いていくのですが唯一安静を保てないのが心臓なのです。従って、心
臓に後遺症が来てしまうのです。とりわけ、心臓を栄養している冠動脈は心臓
の表面を取り巻いて常に動かされています。このため、血管の壁が著しく弱く
なってしまうのです。

Q4.後遺症はどうなりますか

A4.冠動脈の血管の壁が弱くなると中の圧力に負けてだんだん膨らんでしまつ
ことになります。これを冠動脈の瘤、冠動脈瘤といいます。一方、冠動脈の中
は常に心臓へ栄養や、酸素を送るために血が流れていますから、冠動脈瘤で拡
がった部分では血が滞ることになります。ここで血栓・・血の塊ができること
になります。これがある時、中で詰まってしまう、大人でいう心筋梗塞と同じ
ことが起こるわけです。

Q5.血を固まらせないようにすればよいのですか

A5.もちろん血が固まらないように薬、主にアスピリンですが、飲む必要があ
ります。冠動脈瘤ができてしまっても小さなものなら1年ほどの経過で自然の
回復力によってもとへ戻っできます。しかし、残念ながら最初にできてしまっ
た冠動脈瘤がかなり大きなもの・・つまり一般に冠動脈の太さは2mm程度の
ものなのですが、8mm以上にもなったものについては逆にこの自然の回復力
がいびつに作用するため、狭くなる部分をつくってしまいます。これが進行し
ていくと、血栓はなくても結局は詰まってしまうことにな
ります。

Q6.怖い病気ですが後遺症はどのくらいの頻度で起こるのですか

A6.最近の1997年から1998年の全国調査成績では心障害の発生率は20.1%と報
告されています。しかし、この中で本格的に冠動脈狭窄が問題となる巨大瘤は
わずか0.55%のみです。つまり最近では川崎病をやっても100人中80人は全く
問題なく、99人までは大きな問題にならないといえます。ただし、この成績は
治療の進歩と早期発見によってもたらされたものだということを見逃してはい
けないと思います。最近はガンマグロブリン大量療法やミラクリット療法とい
った強力に炎症を静める治療法が出てきました。しかし、これらのよい治療法
も早期にやり始めないと意味がありません。冠動脈瘤の発生を考えてみてもわ
かるように早い時期に炎症を静めないと、血管の壁の夕メージが来てしまい、
冠動脈瘤を予防できません。私どもの小児科の統計でも1週間以内に川崎病と
しての治療が開始なされなかったものでは冠動脈瘤、冠動脈狭窄のリスクが高
いことが示されています。少なくとも熱が3日以上続いたときには小児専門医
の診察を受けていただきたいと思います。


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