「日本の歯科治療費」

熊坂覚=くまさか歯科院長、八戸市在住

歯科治療費は高いんじゃないのか?という話を時々聞きます。
実はわが国の歯科治療費は、主要先進国中どの国よりも安価でありながら、治
療水準は安定した高い技術を供給しています。

その背景には、良質の歯科医療を低い評価額で提供する、歯科医師、歯科衛生
士、歯科技工士たちの涙ぐましいコスト削減努力が隠れています。
そこで先進各国の歯科事情を見てみましょう。
下顎の奥歯が酷い虫歯で、神経の治療後銀歯を被せるまでの治療費を例にとり
ます。

日本…通常3割負担7800円(10割評価額2万6千円)。
受診システム、技術サービスは高水準だが、低い評価。

米国…3500ドル〜(約33万円)。
先進国の中で唯一、国が医療保険を運営していない。
全額患者負担。最高水準の技術とサービスを提供するが費用も最高水準。

イギリス…原則無料だが、治療内容が限られている上、NHS(国立医療サー
ビス)加盟の歯科医院は少なく診療予約が半年ほど先になる。
通常は自費で1000ポンド(約13万2千円)ほど。

スウェーデン…980クローナ(約1万1千円。10割4400クローナ、約
5万円)。
歯科治療は19歳まで矯正を含めて全て無料。
20歳を過ぎると、3000クローナ(3万5千円)を超えた分は7割負担と
なる。

ドイツ…170ユーロ(約2万円)。
補綴(被せもの)以外はすべて無料。
補綴は6割自己負担で、金属料はすべて自己負担。

フランス…75ユーロ(約8300円。10割750ユーロ、約8万3千円)。
患者負担は診療費の1割。高水準の治療。公的歯科医療先進国。

イタリア…無料(年収449万円以下)。
年収450万円以上はすべて自費で400ユーロ(約4万4千円)。
保険診療は登録制で治療スタートまで数ヶ月必要。

各国を一概に比較するのは難しいかもしれませんが、わが国の歯科診療システ
ムが技術とサービスのバランスに優れている一方、評価はきわめて低いことが
分かるでしょう。
日本の歯科治療費は決して高くないのです。