「耳の病気Q&A」


西村耳鼻咽喉科医院 西村 哲也


 本日は子供とお年寄りの代表的な耳の病気についてお話したいと思います。

 まず子供の耳の病気です。耳垢は自宅では耳入口部付近を湿らせた赤ちゃん
用の細い綿棒で静かにかき出す程度にとどめ,取れなければ無理せず耳鼻科で
取ってもらう事をお勧めします。最近小児急性中耳炎の反復難治例が増加して
いる原因として,元々小児の耳管が短く水平で鼻炎から中耳炎を起し易い事に
加え,特に2歳未満児の免疫の未熟性,多剤耐性菌の増加,集団保育による園
内感染,両親の喫煙による気道への影響等が挙げられます。発熱の原因が急性
中耳炎の場合は鼓膜切開排膿により翌日には熱がすっと下がります。滲出性中
耳炎の症状は耳閉感や滲出液のたまり具合により軽度から中等度の難聴を伴い
ますが,特に小児の両側中等度難聴では,普通の会話が聴き取れないので情緒
不安定や言語発達に影響を与える場合さえあります。又放置すると稀に難治な
癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎へ進行する場合もあるので注意が必要です。滲
出性中耳炎の治療は合併している鼻疾患の治療も重要です。保存治療で難治の
場合,鼓膜切開,更には鼓膜換気チューブ挿入術にアデノイド切除術を併用す
る場合もあります。先天性難聴は出生1,000人に1人程度と言われ,原因は遺
伝性が50%以上で,内70%が常染色体劣性遺伝で多くが非症候性です。先天性
難聴の治療は多くが残存聴力を補聴器で補い早期から言語獲得の訓練を行いま
す。小児の人工内耳の適応は,1歳6か月以上で補聴器を装用しても補聴効果
の無い両側内耳機能の高度低下例です。

 次はお年寄りの耳の病気です。加齢性難聴(老人性難聴)は主に耳の神経細
胞の老化で不自由時は補聴器で補う事になりますが,補聴器を通した音は本来
の聴こえ方と異なるので脳が補聴音に慣れる練習が必要になります。通信販売
の集音器は度を合わせていないメガネと同じで基本的にお勧めしません。耳鼻
科で検査した上で専門補聴器店で自分の聴力に合った補聴器を作ってもらいま
しょう。耳鳴りは80%以上が難聴を伴い蝸牛の有毛細胞の障害により生じる異
常信号が主な原因と言われています。耳鳴りの治療は急性期は主に原因耳疾患
の治療ですが,慢性期は脳のストレスの悪循環を断ち切る事が治療の大きな目
的となります。慢性の耳鳴りの治療としては,耳鳴りの音を気にならない音へ
変えていく音響療法{就寝時に音を絞ったクラシック音楽やFMラジオの局間ノ
イズを聴く,TRT(tinnitus retraining therapy:耳鳴り順応療法)等},十
分検査した上で耳鳴りの原因が心配ないものである事を説明し理解を深め趣味
等様々な活動を勧める認知行動療法,耳鳴りの不安を取り除く心理療法や緊張
や不眠等に対する自律訓練法,ストレスを和らげる各種薬物治療等を組み合わ
せて行っていく事となります。めまい疾患の中では実は耳性めまいが最も多い
のですが,めまいの検査の順番としてはまず内科でCTやMRIで頭から来る危険
なめまいを検査し血液検査や血圧測定や心電図で全身的なめまいや心臓病の影
響等を調べます。それでも異常がなければ耳鼻科で各種平衡機能検査で耳から
来るめまいを調べます。最後にこれは皆さんご存知浅田真央ではなく安藤美姫
選手ですが,トップフィギュアスケーターの場合高速回転中や直後でもほとん
どめまいを感じないようですが,これは毎日の一定方向の三半規管の刺激によ
って脳が訓練され慣れてめまい感を押さえ込んでいるからだと思われます。

 最後は余談になりましたが,皆様ご清聴誠にありがとうございました。