「腰痛・関節痛でお困りの方へ〜原因・予防法・最新治療について〜」


八戸平和病院 藤井 一晃


 今回は頻度の多い腰痛,関節痛の原因,予防法,最新治療についてお話しさ
せていただきました。

腰痛について
 腰痛は整形外科外来で最も多い症状です。経験したことがある方も多数いら
っしゃると思います。急激に痛くなり,まったく動けなくなるほど激しく痛む
ものから,慢性的に持続する場合もあります。

 原因として急性腰痛症(いわゆるぎっくり腰),腰椎椎間板ヘルニアがあり
ます。

 急性腰痛症とは重い物を持ち上げるなど,ちょっとしたきっかけで突然強い
腰痛を生じることを言います。腰周囲の筋肉の損傷,疲労により生じると言わ
れていますが原因ははっきりしないこともあります。通常は数日の安静で軽快
しますが,楽になる姿勢がない,発熱を伴う,冷や汗がでるなどの症状を伴う
場合には内科的疾患が原因となる場合もあるため早急に専門医の診断を受ける
ことが重要です。

 腰椎椎間板ヘルニアは椎間板の突出により神経を圧迫し症状を生じます。現
在ではMRIにより容易に診断が可能です。保存的治療(安静,薬,リハビリ)
で軽快する場合がほとんどですが,保存的治療で直らない場合,排尿障害,急
激な筋力低下を生じた場合には手術を要します。現在では内視鏡手術が進歩し
浸襲の少ない方法で手術が可能となってきました。

 近年高齢者の増加とともに腰椎疾患として腰部脊柱管狭窄症が増加してきて
います。神経の通り道である脊柱管が狭くなり,神経が圧迫される病気です。
腰痛より歩行に障害がでます。歩くと足がしびれ歩けなくなるなどの症状があ
る場合には腰部脊柱管狭窄症を念頭において検査,治療を進めます。

 これら腰椎疾患では普段の生活で腰に負担をかけないことが重要です。また
背筋を鍛えるより腹筋を鍛える方が腰にとっては大切であることを知らない方
も多いようです。不安のある方は病院にて理学療法士より腰痛体操の指導を受
けることをお勧めいたします。

関節痛について
 外来に訪れる頻度が高いのは膝痛,肩痛,股関節痛です。
 膝の場合は変形性膝関節症が最も多い疾患です。加齢に伴い変形が進む状態
で,患者さんは比較的高齢です。軟骨がすり減ることにより生じますが,治療
はまず保存的治療(薬,リハビリ,関節内注射)から開始します。ヒアルロン
酸の関節内注射は効果が高く初期から中期では症状の軽快,関節症の進行予防
も期待できます。また進行を予防する方法としては大腿部の筋肉を鍛えること
が重要です。リハビリで大腿四頭筋訓練を指導いたします。最近では内服する

ヒアルロン酸,コラーゲン,コンドロイチンなどが通信販売されており,外来
でよく効果について質問されることがあります。医学的には効果について疑問
視しているというのが大方の意見のようです。薬というようりはサプリメント
と思って内服していただいた方がよろしいようです。変形が進行した場合には
保存治療では改善しないため手術的治療を行います。病状の進行度により内視
鏡手術,骨切り術,人工関節置換術のいずれかを選択いたします。

 次に多いのは肩関節痛です。肩は骨よりも関節を支えている腱板という組織
がすり減ることにより炎症を起こし疼痛を生じる肩関節周囲炎(俗にいう五十
肩)が最も多い疾患です。数年前に私自身も肩関節周囲炎となりました。夜間
も疼痛で目が覚めるほどの疼痛を伴います。経験すると初めてわかりますが,
関節痛というのは本当に何とも言えない,いやな痛みです。幸い現在では症状
はなくなりましたが,完治するまで半年を要しました。保存的治療にて治る疾
患ですが,適切に治療しないと可動域制限を残すことがあります。五十肩とい
っても馬鹿にせず早期に整形外科を受診されることをお勧めいたします。

 股関節の場合には原因が先天性股関節脱臼,臼蓋形成不全など先天的な要素
が多くなります。初期では保存療法を行いますが,進行すると保存的な治療で
は改善しないことが多く手術的治療が行われます。手術方法には骨切り術,人
工股関節置換術がありますが,年齢,変形の進行度により手術方法を選択いた
します。現在では人工股関節置換術は10cm以下の小さい傷で手術を行なうMIS
(最小侵襲手術)が主流になり,2―3日後には歩行訓練を開始し,入院期間
も短くなってきました。

 整形外科疾患は保存治療で改善することが多いのですが最終的には手術が必
要になることも少なくありません。現在では手術の技術も進歩していますので,
怖がらず,早めに手術を受けたほうが賢明と思われます。ぜひ気軽にご相談く
ださい。

 ホームページにて疾患の解説,相談もお受けしておりますので閲覧していた
だければ幸いです。
http://www.dr-fujii.net/