「消化器のがんを知ろう」


八戸市総合健診センター 菅原 泰男


 欧米では減少しているがんの死亡数が日本では増えています。がん検診の受
診率の低さがその原因であると言われています。

 消化器(食道,胃,十二指腸,小腸,大腸,肝臓,胆のう,膵臓)は飲食物
から栄養分を体内に取りこむ働きをする臓器で,どれもががんを発生する可能
性があります。

 私たちの身体は60兆個を超える細胞でできています。それぞれの細胞には一
定の寿命があって順番に新しい細胞に入れ替わり,長い人生の間に全身の細胞
の入れ替わりが行われています。細胞が入れ替わる際に「まともでない細胞」
が生まれてしまいます。この「まともでない細胞」の殆どは「免疫」のしくみ
により死滅してしまいますが,「免疫」のしくみで退治されずに長い年月を経
て増えつづけて「がん」という病巣になります。

 日本人の死因の第1位はがんであり,いまなお増加しています。青森県のが
ん死亡率(人口10万人当たり)は4年連続で全国最悪で,部位別でも大腸がん
1位,胃がん6位となっています。八戸市のがん死亡者数は大腸91人,胃89人,
肝55人,膵51人,胆のう30人となっています(平成18年)。

 生存率(診断から一定期間後に生存している確率)は,病巣の大きさ,広が
りの度合,診断・治療からの期間により異なってきますが,治療後5年間再発
がなければ(5年生存率),再発は非常に稀となり治療率の目安となっていま
す。

 どんな方でも,80歳を超えると視力や足腰が衰え,免疫力も弱ってきます。
これは自然の理(ことわり)です。「老けたくない」「死にたくない」と頑張
ってもいつかは「無理な望み」と悟らざるを得ません。男性は70歳,女性は60
歳を超えるとがん罹患率は高くなりますが,がん死亡率は下がってきます。が
んに罹っても天寿を全うできる確率は高くなります。その秘訣は「がん検診」
で救命可能ながんをみつけることです。「要精密検査」といわれたら,精密検
査を受けてがんの有無を確かめることです。それは,「がん死亡減少効果」の
恩恵に浴することになります。

 がん検診受診率はまだまだ低いというのが全国的な現状(胃がん検診は男性
27.6%,女性22.4%。大腸がん検診は男性22.2%,女性18.5%)です。八戸市
住民(平成18年)の胃がん検診は受診率25.4%,要精検率6.8%,精検受診率8
1.0%となっており,大腸がん検診は受診率28.2%,要精検率5.4%,精検受診
率81.5%となっています。肝がん,胆のうがん,膵がんを見つけるには腹部超
音波検査が必要です。肝炎ウイルス検査も欠かせません。

 がんの発生には遺伝的要因10%,環境的要因90%が関与しています。日常生
活での予防には,たばこを吸わない,お酒はほどほどに,バランス良い食事,
適度な運動の継続,肥満に気をつける,などがあげられます。

 がん年齢(中高年)になってから予防を試みても効果はあまり期待できませ
ん。予防は若年からスタートすることです。検診で発見されるがんは自覚症状
のない「早期がん」で予後は良好です。症状があって病院で見つかるがんは「進
行がん」の場合が多いのです。症状がないうちに検診を受けることが重要です。
 (質疑)痔があって便に血が混ることがある場合,痔による出血かがんなど
による出血か,大腸の精密検査で確認して頂くことが必要です。

 (質疑)がんでも早期のものは内視鏡的切除で完治できます。