「こどものアレルギーQ&A」


中山こどもクリニック 中山 信吾


 こどものアレルギーにつきQ&A形式でお話ししました。以下代表的な項目
を述べます。

Q1.アレルギーとは何ですか?

A1.体内に入った異物を攻撃する抗体を作り体を守る仕組みが免疫です。ア
レルギーでは異物に対しIgE 抗体という特殊な抗体が作られこれが肥満細胞な
どに結合し再度異物が入るとヒスタミンなどが出て体に良くない症状が出現し
ます。免疫は人体にとってプラスですがアレルギーは人体にとってマイナスな
免疫です。

Q2.アレルギーは予防できますか?

A2. 母親が妊娠中に卵やダニの回避を行っても子供の喘息や食事アレルギー
の発症予防にはなりません。妊娠中の喫煙は胎児に悪影響があるため避けまし
ょう。乳児期の卵,小麦等の摂取制限も食事アレルギーの発症予防にはなりま
せん。

Q3.気管支喘息の治療はどうするのですか?

A3.気道の炎症を抑えるコントローラーと気管支を拡げるリリーバーがあり
ます。前者は吸入ステロイドやロイコトリエン拮抗薬,後者はβ2刺激薬やテ
オフィリン製剤等です。喘息では症状がない時でも気道の炎症は残っているた
めコントローラーは継続し,リリーバーは症状が改善したら原則として減量中
止します。

Q4.喘息では家庭での注意点はありますか?

A4.ダニ対策は重要です(絨毯やぬいぐるみは避ける,床はフローリング,
ソファーは合成皮革等)。犬,猫,ハムスターなどは飼わない方が望ましく家
族は可能なら禁煙して下さい。

Q5.気管支喘息はよくなりますか?

A5.小児の気管支喘息では30〜50%は思春期頃に症状が軽快するなど自然治
癒傾向もみられますが一部は成人期まで持ち越します。また一旦軽快しても成
人期で再発することもあります。

Q6.食物アレルギーの年齢分布と原因は?

A6.発症のピークは乳児で有症率は5〜10%です。乳幼児期の主な原因は鶏
卵,乳製品,小麦等ですがこれらの多くは加齢とともに徐々に耐性が獲得され
ます。学童期以降の有症率は1〜2%です。原因は甲殻類,果物,魚,ソバ,
ピーナッツなど多彩で耐性獲得の可能性は高くありません。

Q7.食物アレルギーの治療は?

A7.必要最小限の原因食物の除去が原則で代替食品などを摂取し栄養のバラ
ンスを保ちます。定期的に血液検査等を行い耐性獲得の可能性がある場合,食
物負荷試験で確認します。薬物療法は予防薬(インタールR)や症状出現時の
抗アレルギー剤等ですがあくまで補助療法です。

Q8.アトピー性皮膚炎での皮膚の特徴は?

A8.皮膚のバリア機能の低下に伴い皮膚の水分量は減少しています(ドライ
スキン)。このためアレルゲンや種々の刺激物の皮膚への侵入が容易となり皮
膚炎が惹起され掻痒がおこります。

Q9.アトピー性皮膚炎の治療は?

A9.根治治療はなく症状を軽減させ自然寛解を期待します。薬物療法(ステ
ロイド外用薬,タクロリムス軟膏,抗アレルギー剤の内服等)のみでなくスキ
ンケア(皮膚を清潔に保つ,保湿剤で皮膚の乾燥を防ぐ)や悪化因子への対策
(環境アレルゲンの除去等)も重要です。

Q10.ステロイド外用薬使用の際の注意点は?

A10.全身的な副作用は通常起きませんが皮膚萎縮,酒■性皮膚炎などは起こ
り得ます。副作用を回避するためには適切な強さのステロイド外用薬で皮膚炎
を短期間に改善させその後間欠投与で維持し徐々に保湿剤を主体とします。顔
面はステロイドの吸収が良好であるため注意が必要です(タクロリムス軟膏へ
の変更も考慮)。