「内視鏡で治す胃腸の病気」


きよかわ内科胃・クリニック 清川 哲丸


 内視鏡が実用化されて以来,初期の頃には診断面にのみ注意が向けられてい
ました。
 特に本邦では胃カメラが発達し早期胃癌をはじめとする各種胃疾患の診断に
素晴らしい発展がありました。
 その後,ファイバースコープの登場後は内視鏡を用いた治療に関心が向けら
れるようになりました。本格的な内視鏡の治療への応用としては1968年に
胃ポリープ切除が行われ,特に高周波電流を用いた方法はその後大きく発展し
ました。また近年電子内視鏡が登場してからは,多人数の共同作業が容易とな
り,このことが内視鏡的治療のいっそうの進歩,発展,普及に拍車をかけるこ
とになりました。
 そして消化器内視鏡は診断以上に治療面で大きな意味を持つことになりまし
た。
 いまや内視鏡検査を志すものにとって,診断面ばかりではなく内視鏡治療に
関する知識,手技の習得は必要不可欠になったといえるでしょう。今回は内視
鏡で治す胃腸の病気について代表的なものをいくつか紹介します。

1.消化管異物摘出
 1)使用する機器
内視鏡,異物鉗子,ポリペクトミー用スネア,バスケット鉗子
 2)異物の種類
硬貨,魚骨,義歯,PTP 包装,玩具が多い

2.ポリペクトミー(ポリープ切除術)
 1)使用する機器
内視鏡,高周波発生装置,ポリペクトミー用スネア
 2)部位
1食道 2胃 3大腸

3.食道静脈瘤硬化療法
  使用する機器
   内視鏡,穿刺針,硬化剤,装着バルーン

4.消化管出血に対する治療
   1局注療法
   2止血剤散布法 
   3ヒートプローブ法
   4レーザー止血法
   5クリップ止血法

5.消化管狭窄に対する治療
  原則的に良性のものが対象
 (腐食性食道炎,逆流性食道炎,食道胃吻合後の瘢痕狭窄など)

6.悪性腫瘍に対する治療
 1)胃癌,食道癌の内視鏡的切除
 2)胃癌,食道癌に対するレーザー治療
 3)大腸癌の内視鏡的切除
 4)大腸癌に対するレーザー治療

7.内視鏡治療の偶発症(1983〜1987)
   1偶発症
  出血,穿孔,ショック,心停止など
  一般内視鏡 4,425,654例中0.024%
  腹腔鏡    23,968例中0.526%
  全体    4,449,622例中0.027%
   2死亡例
    一般内視鏡       0.003%
    腹腔鏡         0.017%
    全体          0.003%