「視力の変化からわかる病気」


吹上眼科 久保勝文


 「視力の変化からわかる病気」ということで,今回は1.白内障2.緑内障
3.網膜はく離4.糖尿病性網膜症5.加齢性黄斑変性症について説明した。

 白内障は,加齢により水晶体がにごり眼底に光が届かなくなり,症状が出現
する。むかしは,カメラと同じと説明したが,現在ではデジタルカメラや携帯
電話で写真を撮ることが多いため説明が難しくなってきている。原因は加齢で
あり,60歳代から比率が高くなってくる。症状は,まぶしい,目がかすむ,ぼ
やける,細かい字が読みにくいなどが主要な症状である。治療は,最初は点眼
薬で経過観察を行い不自由を感じたら手術となる。手術の時期としては,日常
生活が大変になった,まぶしくて大変などであるが,運転免許を落ちたという
理由が一番多いのではと考えている。手術は,局所麻酔で行い,当院では日帰
りで行っているが入院に関しては病院ごとによるので相談となる。手術手技は
2mmから3mm程度の切開創から,白内障手術機械を入れ白内障を超音波で砕い
て吸い取り,最後に眼内レンズを入れる。眼内レンズについての最近の話題と
して,多焦点眼内レンズが自由診療という限定した範囲であるが使用可能とな
った。従来の眼内レンズでは,焦点が1個しかないために遠くがよく見えても
新聞などの近くを見る際には老眼鏡が必要であった。しかし,多焦点眼内レン
ズを使用することにより,良好な遠くを見る視力を確保したままで,眼鏡を使
用しないで近くを見る視力を高めることができる。当院でも10眼程度行い,ほ
とんどの人が眼鏡を使用しない日常生活を送っている。

 緑内障の見え方の変化は,内側の視野欠損からはじまり,全体的な視野狭窄
に進行してくる。ただし,普段は両眼でみることなどから気づかないことが多
い。健康診断や別の疾患で眼科通院中に緑内障を指摘されることが多い。40歳
以上になると,緑内障の比率が上昇してくる。治療は点眼。進行してからは手
術でも回復は困難なため,早期診断・早期治療が重要となる。

 網膜はく離は,ものが飛んで見える飛蚊症や,暗いところや目を閉じたとき
に視野の隅に光が見える光視症が初期症状となる。さらに症状がすすむと視野
欠損が出現し最後は視力低下となる。原因は網膜裂孔が多く,この段階での治
療は外来での網膜光凝固であるが,進行し網膜はく離の状態になれば入院して
の手術となる。

 糖尿病性網膜症は,最初は無症状で最後に視力低下する。糖尿病で血糖が高
い状態が続くと,眼底出血は増加するが視力はほとんど変化がない。しかし,
最後に硝子体出血などが発生すると視力は急激に低下する。治療は網膜光凝固
で,進行すると硝子体手術となる。しかし,失明原因の上位にあることからも,
視力の回復はかなり困難である。糖尿病治療および眼科受診で,早期発見・早
期治療が大切である。

 加齢性黄斑変性症では,視力低下及びゆがんで見える,中心部が暗く見える
などがある。昔は珍しい病気の部類であったが,最近は増加傾向にあり検査の
種類も増え,年々新しい知識および治療がでてくる分野である。原因は喫煙,
紫外線などである。当院では眼科一般検査を行い,詳しい検査は八戸駅前の「は
るみ眼科」に紹介している。

 最後に質問受付時間となったが,講演内容とまったく関係ない質問が多く,
一般の人に医療情報を伝えるのは相変わらず難しいと感じた1時間であった。