「こころの健康のために役立つ話」


ささクリニック 笹 博


 昨年の中央公民館での講演「こころの元気を保つ方法」とほぼ同じ内容です。
A.良いコミュニケーションのコツ,B.良い眠りについて,C.自分に言っ
てあげてほしい大切な4つの言葉,の三つについて話しました。質問に対する
返答を追記しました。

 A.まず大切なのは家族間や職場での良いコミュニケーションです。そのた
めのコツについて5つの大切なことをお話します。1話を聴くときには,大き
くうなづき「そうか,そうか」と聞いてあげましょう。2相手が気持ちを話し
たときには,相手の言葉を繰り返してあげましょう。良くないのは,『腹が立
ったんだ』と言った時に『じゃあ今度からこうすればいいじゃないか』などの
ように答えを言うことで,話した人が判ってもらえなかったと感じてしまいま
す。3自分の気持ちを話す時は,『ぼくは,わたしは,こう思う,こう感じる,
こうしたい』と話すことが大切です。『あなたは』で話し始めてはいけません。
4その場で起こっていることだけを取り上げることも大切です。例えば,『こ
の間も…だった』『いつだってあんたは…だ』と過去のことを持ち出すと大喧
嘩になります。5批判せずに肯定的に話します。『こんなんじゃ,駄目じゃな
いか,もっと努力しなくては』と言われるよりも,『よくできたね,ここをこ
うするともっとよくなるよ』と言われた方が元気とやる気が出るのです。

 B.良い眠りを得るために大切なのは気楽に構えることです。眠れないこと
があると「困ったな」と考えがちですが,1実際には暗くして目を閉じて気楽
に横になっているだけで,8割がた熟睡時と同じ休養になるのです。『眠れな
い,困ったな』と考えるのを止めて,気楽な空想をしてみましょう。2眠りに
関する考えを気楽で肯定的なものに変えて力を抜くことも効果的です。『6時
に起きなければならない』ではなく『6時までゆったり休むとよい』とか,『早
く眠らなければ明日が大変だ』ではなく『気楽に横になっていればOK』などと
考えることでよい眠りが得られるようになります。

 C.「みんなが幸せになるホ・オポノポノ」(徳間書店)より,自分に言っ
てあげて欲しい4つの言葉を紹介します。『ありがとう。ごめんなさい。ゆる
してください。愛しています(大切にします)』この言葉は頑張って生きてき
た自分を労い慈しむ言葉です。意識して口にしていくことで心が温かくなって
くると思います。

 自殺予防週間です。どんなに辛くても自殺だけは思いとどまってください。
「生きがいの創造2」(PHP)によると,自殺すると猛烈に後悔して苦しみ暗
闇をさまよい歩くことになるそうです。一方で残された家族は長く自分を責め
ることになるのです。

 心や体の健康のためには,自分を大切にすること,自分に優しくすることが
大切です。「自分に厳しく他人に優しく」と言われますが,多くの人は「他人
にもっと厳しく」となりがちです。自分を大切にすると,力をより発揮でき,
人や社会のためにより良く貢献できるのです。

 質問がありました。親戚の青年が「盗聴されている狙われている」と言って
閉じこもっているがどうしたらよいかというものでした。このケースは統合失
調症と考えられ,治療で改善・回復します。まず家族が保健所や役所の保健師,
精神科病院の相談員等に相談すると良いです。それぞれのケースに応じて,ど
のように対応したらよいか,適切な指導が受けられると思います。受診させよ
うと説得しても本人が頑なに拒否するのでどうにもならないと悩んでいる人が
いますが,家族が問題を理解し,どう話しかけるかを学ぶことで事態が良い方
に動いていきます。思い切って相談してください。