「うつ病について −受診からリハビリまで−」


八戸マナクリニック 岡田 元


 日本では平成10年から13年連続,自殺で亡なる方が3万人を超えています。
交通事故死亡者が平成22年は5千人弱だったのに比べ非常に多い数字です。
 また,自殺をされた方を調べると約4割がうつ病で,自殺をされた方の9割
位は亡くなる1か月前には,うつ病やうつ状態だったのではないかという調査
結果が有ります。
 一方うつ病は,適切な相談で予防でき,かかっても治療で自殺に至らない事
も多い病気です。
 一生に一回うつ病にかかる方がおよそ10人に1人というありふれた病気です。
 うつ病の原因ははっきりとしたものが有りません。遺伝もほぼ無関係です。
しかし環境の変化(転居,昇進,子供の進学や就職に伴う別居)がひきがねと
なる事が多いのです。
 うつ病の主な症状は・気分が落ち込む_・今まで好きだったものにも興味が
わかなくなる等でこれらが概ね2週間以上続き,社会生活に差し支える場合う
つ病と定義しています。心の病ですが体の症状も多くでるのが特徴です。

1.受診について
 うつ病をこじらせると,治療しても慢性化したり,症状が改善するまでに時
間がかかったりします。経済的にも損失が大きい状態になりかねません。可能
であれば精神科や心療内科を受診されれば一番良いでしょう。ご家族や,職場
なら上司,産業保健スタッフ等に相談してみましょう。地域では,青森県八戸
地域産業保健センター,八戸市庁の健康増進課,八戸保健所等で相談を受けら
れます。

2.治療について
 では治療はどんな事をするのでしょうか。
 柱が3つ有ります。a.休養_b.お薬での治療_c.精神療法(主に外来で
の短時間の医師からのアドバイス)です。良くなってきた段階で,家庭で通常
の生活をする為,休職されていれば復職にむけてリハビリテーションを行いま
す。
a.休養
 うつ病の状態は疲れきった状態ですので,きちんと休む事が大切です。この
時,昼夜逆転にならないように気をつけましょう。急性期は夜さえ眠れれば昼
間も休んでいていいのです。
b.お薬での治療
 お薬は,主に抗うつ剤,場合によっては精神安定剤や,睡眠薬を利用する事
が多いのですが,安全なお薬が開発されてきておりますので心配しないで服用
して良いでしょう。うつ病の治療で使われる薬のほとんどがお酒より安全です。
c.精神療法
 一般的に外来で行われる事が多いのは,患者さんが困っている事にどう対処
するのか一緒に考える事です。長い時間をかければ良い訳では有りませんし,
治療の目標や,今治療のどの辺りにいるのか確認をする事も大切です。このと
きにお薬についての説明や,休養の大切さも同時に説明される事が多いです。

3.うつ病のリハビリテーション
 生活リズムを整える,散歩や軽い運動を始める,症状の出方をよく知るため,
日本うつ病学会のホームページからダウンロードできる「睡眠覚醒リズム表」
等を使って,自分の生活リズム等をチェックする事から始めてみましょう。こ
れらとともに,職場復帰なら図書館に通う,作業能力の回復,休職中なら会社
付近まで行く等を行い社会復帰準備をします。当院を含め病院,診療所でも社
会復帰プログラムが有ります。

4.まとめ
 うつ病は今まで通りのやり方で物事を処理していた結果どこか体や心に無理
が来てしまった状態です。規則正しい生活をし,もともとお持ちの能力を生か
し,うつ病がぶり返さない様に社会に戻る準備がリハビリテーションです。
 うつ病になったことは不幸かもしれません。しかし,その治療を通して「今
までのその方の生き方を見直す良いチャンスになる」と考えて私自身治療にあ
たっております。