「突然死を防ぐために」


村田内科 村田 貞幸



 突然死とは発症から24〜48時間以内に亡くなる病態と言われています。原因
にはいろいろありますが,最も多いのが「急性心筋梗塞」です。急性心筋梗塞
とは,発症から48時間以内に35〜50%が死亡する危険な病気です。今日は,心
筋梗塞とはどんな病気か,どんなことに気をつければよいか等を学び,突然死
を防ぎましょう! 心臓は全身に血液を送るポンプの働きを行っていますが,
この心臓に栄養と酸素を運ぶ血管を冠動脈と言います。この冠動脈が狭くなる
と狭心症を生じ,詰まる(閉塞する)と心筋梗塞を生じます。狭心症で亡くな
ることはありませんが,心筋梗塞になると死亡率が高くなります。狭心症も心
筋梗塞も,症状は左胸だけでなく左肩,左上肢,首,下顎,背部などの痛みや,
圧迫感,絞扼感です。狭心症では症状の持続は1〜5分間ですが,心筋梗塞で
は30分以上持続し,冷汗を伴い,意識を失うこともあります。ニトログリセリ
ン(舌下)が狭心症ではよく効きますが,心筋梗塞では無効です。

 狭心症と心筋梗塞の危険因子には・加齢 ・家族歴 ・高血圧 ・高脂血症 ・
糖尿病 ・喫煙 ・肥満 ・運動不足 ・ストレス―などがあります。高血圧が無
い人に比べて高血圧の有る人では狭心症と心筋梗塞の発症率が2.7倍高くなり,
さらに高脂血症を伴うと4.7倍,さらに糖尿病も伴うと5.5倍,喫煙も加わると
7.7倍まで高くなります。前述の・から・は,個人の努力で改善可能ですので,
心当たりのある方は早速できることから改善に努めてください。

 心筋梗塞は安静時の心電図で診断可能ですが,狭心症は発作時にしか心電図
変化が見られないため,運動負荷心電図検査や24時間ホルター心電図検査が必
要です。その他に心臓超音波検査,心筋シンチグラフィー,血液生化学検査,
造影CT検査などありますが,冠動脈病変(部位と狭窄の程度)を診断するため
には冠動脈造影検査が必要です。

 狭心症や心筋梗塞の治療法には,薬物療法(血管拡張薬,抗血小板薬),カ
テーテル治療,バイパス手術,その他(心移植など)があります。カテーテル
治療では,小さな風船の付いた細いカテーテルで冠動脈の狭窄部(閉塞部)を
広げます。その後の冠動脈の再狭窄を防止するためにステントがよく用いられ
ます。薬剤溶出ステントが使用されるようになってからは,ステント内の再狭
窄は減少しました。時間が経つと吸収されるステントも開発中です。カテーテ
ル治療が困難な病変に対しては,冠動脈バイパス手術が行われます。胸骨の後
ろを走行する内胸動脈が主に使用されており,狭窄(閉塞)部の末梢側にバイ
パス血管を吻合します。以前は心臓を止めて手術していましたが,最近は心拍
動下でのバイパス手術が可能となり,天皇陛下もこの手術を受けて元気になら
れています。

 日常生活で気をつけることは,肥満の解消と禁煙です! 肥満は糖尿病,高
コレステロール血症,高血圧,運動不足を伴うことが多く,危険因子の宝庫で
す。食事の量を減らし,軽い運動でも毎日続けることが大切です。コレステロー
ルの多い食品や塩分の多い食品を控え,毎日腹八分目に心がけましょう。喫煙
により,ニコチンが血管を収縮させ,冠動脈の血流を低下させ,発作を生じや
すくしますので,禁煙に励みましょう。

 特に注意が必要な症状は,胸痛が繰り返し起こる,いつもより長く続く,い
つもより強い,発作を鎮める薬が効かない,軽い動作でも発作が起きるなどで
す。この様な症状があれば,心筋梗塞を発症する危険性が高く,できるだけ早
く医療機関を受診して下さい。

 ご心配な方は,かかりつけ医にご相談下さい。