「“がん”から自分を守ろう! −検診の重要性−」


はらだクリニック 原田 英也



 日本のがん患者は今も増え続けています。罹患者数は,胃がん,大腸がん,
肺がんの順で多く,女性は乳がんがトップです。

 一生涯のうちにがんになる人の割合は男性で3人に2人,女性で2人に1人
といわれています。

 死亡率では,男性で肺がん,胃がん,大腸がんの順,女性で大腸がん,肺が
ん,胃がんの順に高くなっています。

 がんの早期発見には検診が重要ですが,検診を受ける人がまだ少ないという
のが現状です。がんで命を落とす人は1975年に25万人だったのに対し2012年で
は75万人と3倍に増えています。特に青森県はがんの死亡率が高く,75歳未満
では男性は全国1位,女性は5位となっています。特に大腸がんによる死亡率
は男女とも全国1位です。

 「がんを知り,がんと向き合い,がんを乗り越えられる社会」を目指すため
に,喫煙,食生活,飲酒といった生活習慣の改善と共に,がん検診受診率の向
上による早期発見・早期治療が大切と考えます。

 がんの要因となるたばこには発がん物質が約60種類含まれています。また胃
がんはピロリ菌が,子宮頸がんはヒトパピローマウィルスが,肝がんはB型,
C型肝炎ウィルスが原因となります。
 禁煙,除菌,ワクチン接種でがんになる確率を下げることが可能です。

 南部町においても死亡者数で一番多いのはやはりがんです。部位別では,大
腸がん,胃がん,肺がんの順に多くなっています(平成23年)。

 南部町における検診受診率は全国平均より高い水準にありますが,これは全
国の検診受診率が低いということでもあります。

 青森県内の市町村別で比較すると,例えば胃がんであれば1位の鶴田町が検
診受診率57.2%であるのに対し,南部町が20.5%と全国平均より高いとはいえ,
まだ検診受診率は低いのが現状です。検診受診率を80%以上に高める必要があ
ると考えます。

 また検診で要精密検査となっても,その後受診しない人がいるのは非常にも
ったいないことだと思います(大腸がんでは要再検者の45%しか精密検査を受
けていない)。

 がん検診として推奨されるのは
■胸部X線検査(半年に1回)
■胃内視鏡検査(バリウム検査)
■腹部超音波検査
■乳がん検診
■大腸検査(まずは便潜血検査,その後大腸内視鏡検査)
があります。

 大腸内視鏡検査ではがん化する前の大腸ポリープを内視鏡を用いて痛み無く
切除することが可能です。

 腹部超音波検査では肝臓,胆のう,腎臓,すい臓の検査ができ,胆石症,肝
臓がん,膵臓がんの発見が可能です。検診時に腹部超音波検査も受けることを
勧めます。

 乳がん検診はマンモグラフィーと超音波検査があります。乳がんは他のがん
と違い40歳代がピークとなっており,年々罹患者数,死亡者数が増加していま
す。

 がんは50歳以上の人は将来的に2人に1人は罹患する疾患なので,検診によ
り早期発見・早期治療につなげたいものです。平均寿命が全国で男性79.6歳,
女性86.4歳に対し,南部町は男性77.5歳,女性84.9歳と男女とも平均を下回っ
ており,その改善策として検診受診率の向上に努めましょう。自分の身体を守
るのはやはり自分自身です。

 南部町が県内トップのがん検診受診率となり,南部町の平均寿命が延び健康
長寿町となることを目指していきましょう