「気になる肺の病気」


八戸市立市民病院 熊谷 美香



 和田アキ子や桂歌丸が患った病気として,最近知られているCOPD。
 喫煙などにより,気道が炎症を起こし痰が多くなったり,肺が壊れて気道を
圧迫したりして,空気が通りにくくなった状態を閉塞性障害といいます。

 肺が壊れると大きく膨張します。そこには肺胞の機能が低下した,空気の空
き地が出来上がります。役目を果たさないのに大きく息を吸い込むと,一方弁
のように空気が出にくい状態を起こします。

 苦しくて大きく息を吸い込んでいるのに,空気の空き地に入り込み,しかも
吐き出しにくいとなると,かなり苦しいはずです。とくに労作時に症状は強く
なります。

 でも徐々に呼吸機能が低下するので,かなりの低酸素状態になるまで気づか
ない人も多いのです。

 ですからCOPDのチェックリストで自己評価してもらうことが大事です。

 喫煙歴があり,40歳を超えてきたあたりに咳,痰が日常的にあったり,同年
代の人より歩く速度が遅くなってきたりします。

 COPDと診断される患者はまだまだ氷山の一角です。喫煙歴や受動喫煙の環境
にある人は積極的にチェックしてみて下さい。

 タバコの害については皆さんよく知っていることですが,なぜやめられない
のでしょうか?

 まずニコチン中毒。離脱症状としてイライラするなどの精神症状があります。
また吸うとすっきりするため,イライラがないときでも吸ってしまいます。本
当のところは喫煙によって,吸っていないときの覚醒レベルが下がってしまう
ことが問題なのです。

 喫煙者の7割がニコチン依存症であるといいますが,私は重症は多くないと
感じています。

 肺がんやCOPDで入院した患者の多くが,タバコがなくても辛くないと言いま
す。退院後喫煙してしまう人の多くが「そこにタバコがあったから」というの
です。ニコチンガムやパッチの成功率が低いのは,こんなタイプの人が多いか
らではないかと思っています。

 タバコ対策の究極はタバコが世の中に無くなることです。その前段階として
タバコはやはり千円になるべきでした。

 日本は戦後の敗戦ムードを払拭するため,国を挙げてタバコ産業を奨励しま
した。日本専売公社です。その当時タバコは,元地主の商店など町の権力者が
専売特許をもっていました。つまりタバコの販売はステータスだったのです。
未だにタバコ農家があり,タバコ産業があり,根強い利害関係が存在していま
す。

 今懸念していることは,メンソールタバコや軽いといった言葉で修飾された
タバコを,若者が気軽に手に取るようになってきたことです。

 特にメンソールタバコは気道への麻酔作用があるので初心者に吸いやすく,
喘息患者でもメンソールタバコはかえって吸ってしまう人も多いのです。

 2013年の統計で青森県の喫煙率は,男性全国1位,女性全国2位のタバコ県
です。短命県返上を掲げるからには,禁煙は明確な目標です。ぜひがんばって
ほしいと思います。

(講座では,その他肺がん,誤嚥性肺炎についてもお話ししました)