「「気になる脈の乱れ」〜不整脈とは?〜」


村田内科 村田 貞幸



 心臓は血液を全身へ送り出すポンプの働きをしています。1分間に50〜100
回程で規則的に拍動していますが,この心臓の拍動の不規則な状態をすべて「不
整脈」と表現しています。「不整脈」には心房性期外収縮,心室性期外収縮,
心房細動,心房粗動,上室性頻拍,心室性頻拍,心室細動,洞機能不全症候群,
房室ブロック(1度〜3度)などがあります。不整脈では症状が多様であり,
個人差もある為,不整脈の診断と重症度の決定には心電図が必要です。不整脈
では,一瞬の動悸が最も多いのですが,「気が遠のく」などの全身に現れる症
状は危険なサインです。症状のある時に心電図を記録することが重要です。

 不整脈の中で最もありふれたよく見られるものが「期外収縮」です。「予想
される時期の外に出現した収縮」と言う意味で,心房性期外収縮と心室性期外
収縮があります。「一瞬脈が抜ける」,「一瞬胸がつかえる」感じがあります
が,無症状のことも多いです。心房性期外収縮の頻度は健康成人の約93%,心
室性期外収縮では約50%と言われています。心臓に他の病気の無い人では,心
房性期外収縮も心室性期外収縮も生命に悪影響は及ぼさないと言われています
ので,他の病気がないかどうかを確認することが重要です。期外収縮の誘因に
は睡眠不足,精神的ストレス,肉体的ストレス,過労,アルコール,喫煙など
があります。

 脳梗塞を起こしやすい不整脈には心房細動と心房粗動があります。特に心房
細動は期外収縮に次いで頻度の高い不整脈です。発作性心房細動と慢性心房細
動があり,高齢になるほどおこり易いと言われています。心房細動の原因とし
て,加齢,高血圧,心臓病(弁膜症,心筋症,心筋梗塞,心不全),甲状腺の
病気などがあります。脳梗塞の発生率が高いと予想される方は抗凝固薬(血液
を固まりにくくする薬)の服用で,血栓形成の予防が可能です。ワーファリン
という薬は血液の中の複数の凝固因子の合成を抑制して効果を発揮しますが,
定期的な血液検査(PT-INR)が必要です。ビタミンKを多く含む食品(納豆,
クロレラ,青汁など)は食べられず,風邪薬,痛み止め,抗生剤の影響を受け
ます。NOAC(新しい抗凝固薬)では,毎回の血液検査が不要で食事制限も無く,
他の薬との併用に関しても殆ど制限がありませんが,薬価が高く,ワーファリ
ンの約10倍です。発作性心房細動に対しては心臓カテーテルで治療する方法も
最近,行われるようになってきています。

 不整脈の中で最も危険なものが心室細動です。心臓のポンプ機能を担ってい
る心室自体から異常な電気的興奮が連続して速い頻度で出現する不整脈です。
心臓から十分な血液が送り出せない為,直ちに命に関わります。心室細動が生
じると脳への血流が減少し,6秒間続くと失神し,転倒,失禁,3分間を超え
ると脳へのダメージを生じ,呼吸停止,ショック状態となり,10分を経過する
と生存の可能性は乏しくなります。心室細動では,各個人のそれぞれの経過,
症状,その他の心臓の病気により治療法が異なります。AED(自動体外式除細
動器)は,心室細動で倒れた人の心臓に電気ショックを与えて命を救う為の医
療機器です。心室細動かどうかはAEDが判断してくれます。植込み型除細動器
(ICD)は,心室細動による突然死を防ぐ最も確実な方法です。心室細動が生
じるとこれをリードで感知し,本体が心臓に電気ショックを与えて心臓の拍動
を正常に戻してくれます。

 「不整脈」には様々な種類がありますが,不整脈の種類を診断することが重
要です。不整脈の種類の診断には心電図検査が必要です。ご心配な方は,かか
りつけの医師に相談してください。