「気になる心臓の病気」


村田内科 村田 貞幸



1.心房細動
 心房が痙攣するようにとても速く小刻みに震えて,規則正しい心房の収縮ができ
なくなった不整脈です。心房細動そのものは直ちに生命をおびやかすものではあり
ません。心房内に血栓(血液のかたまり)ができ,頭に飛ぶと脳梗塞,心臓(冠動
脈)に飛ぶと心筋梗塞,手足(四肢)に飛ぶと四肢の血栓塞栓症を引き起こします。
心房細動の治療には次のものがあります。
1心房細動以外の病気(高血圧,糖尿病,弁膜症,心不全,甲状腺機能亢進症)の
治療,生活習慣(睡眠不足,精神的ストレス,肉体的ストレス,肥満,脱水など)
の改善が必要です。
2心臓でできた血栓が原因の脳梗塞を「心原性脳梗塞症」と言い,広い範囲の脳の
障害を引き起こし重症になる可能性が高いです。抗凝固薬の服用で脳梗塞の発症を
予防することが可能です。
3心房細動のままで脈拍数をコントロールする治療(薬で治療)と心房細動の発生
を予防する治療(抗不整脈薬による治療と心臓カテーテルアブレーションによる
治療)があります。

2.心室細動
 心臓のポンプ機能を担っている心室自体から異常な電気興奮が連続して速い頻度
で出現する不整脈です。心臓から十分な血液を送り出せないため直ちに生命に関わ
ります(不整脈のなかでも最も危険なものです)。心室細動が生じると脳への血流
量が減少し,失神,転倒,失禁→脳のダメージ,呼吸停止,ショック状態→死亡。
心室細動では1分経過するごとに生存率は7〜10%減少し,10分経過すると生存で
きることは稀です。治療法にはAED(自動体外式除細動器),植込み型除細動器,
薬物療法,心臓カテーテルアブレーションがあります。各個人のそれぞれの経過,
症状,その他の心臓病により治療法が異なりますが,適切な治療により心室細動に
よる突然死を防ぐことができます。

3.狭心症と心筋梗塞
 狭心症は冠動脈の狭窄が原因で,心筋梗塞は冠動脈の閉塞が原因で起こる病気です。
1)狭心症には労作性狭心症(冠動脈の動脈硬化)と異型狭心症(冠動脈のけいれん)
があります。狭心症の症状は胸部圧迫感や締め付けられる感じで(5分以内),部
位は左前胸部,胸全体,左肩,のど,下顎,背中です。労作性狭心症は労作時(走っ
た時,坂や階段を上った時)に胸痛があり,異型狭心症は深夜や早朝に胸痛があり
ます。狭心症の発作時にはニトログリセンが良く効きます。
2)心筋梗塞の症状は胸部圧迫感や胸部絞扼感が非常に強く長く続きます(30分以上)。
冷発汗を伴い,心原性ショックで意識を失うこともあり,ニトログリセンは無効です。
糖尿病の人では痛みを感じにくいことがあります(無痛性心筋梗塞)。
3)心筋梗塞の合併症には,心室細動(突然死の原因),心不全(心拍出量の低下に
よる),僧帽弁閉鎖不全症,心破裂などがあります。
4)狭心症,心筋梗塞の治療法には,薬物療法(血管拡張剤,抗血小板薬,他),心
臓カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術,ステント留置,その他),冠動脈バイパス
手術,危険因子に対する治療(高血圧,高脂血症,糖尿病などの治療),心臓移植
などがあります。
5)気を付けることは,肥満の解消,食事(カロリーの取り過ぎに注意,コレステロー
ルを多く含む食品を避ける,塩分は少なめに),禁煙(ニコチンは血管を強く収縮さ
せます),危険因子の撲滅と治療の継続(高血圧,高脂血症,糖尿病)です。

4.狭心症と心筋梗塞のまとめ
 狭心症と心筋梗塞を予防するには,危険因子を避けることが大切です。食事に気を
つけ,禁煙し,運動を心掛け,肥満とストレスの解消に努める。
「もし,なってしまったら…」冷静に,迅速に,適切に対処しましょう。
急性心筋梗塞の場合は時間との勝負です。
至急,救急病院へ!