「更年期を上手に乗り切るために」


倉本クリニック産婦人科産科 倉本 雅規


 現在は情報過多の時代です。雑誌,週刊誌,本,テレビ,ラジオ,いろいろ
な講演,新聞,近所の井戸端会議,家族,友人などさまざまなところから情報
が入ってきます。インターネットのgooという検索サイトで更年期という言葉
の入っているホームページを探すと,2,304件もあります。情報過多の時
代に生きる皆様は情報の選択が必要になります。

 雑誌『クロワッサン』にあった「私はこうして更年期障害を克服した」のな
かには足の裏マッサージ器・カルシウム・裸体就寝・お灸・ライマブレスレッ
ト・アロエエキス・太極拳・呉汁・カイロ・整体・朝風呂などなど・・・大変
多くの民間療法がでてきます。更年期障害はその起こり方から見るとこれらを
すべてだめですと言い切れないのです。

 更年期障害の症状は不定愁訴といわれるようにあまりに多くてどこが原因な
のだろうかということになってきます。それはのぼせ・ほてり・多汗・冷え・
頭痛・腹痛・腰痛・関節痛・肩こり・しびれ・皮膚の痒み・疲れやすい・むく
み・めまい・動悸・息切れ・耳鳴り・食欲不振・便秘・下痢・頻尿・失禁・性
交痛・物忘れ・血圧の変化・いらいら・不眠・不安感・鬱状態ほかにもまだい
ろいろとあります。これらの症状に対し他の病気を否定して,更年期障害とい
うことになれば,医療機関では次のような治療が行われます。それは日常生活
の指導であり,薬物療法としてホルモン補充療法と漢方療法です。ホルモン補
充療法にはプレマリン,エストラダーム,エストリオールなどのエストロゲン
とプロベラ,ヒスロンなどのプロゲステロンが用いられます。漢方薬は,当帰
芍薬散,牛車腎気丸,加味逍遙散,八味地黄丸,桂枝茯苓丸などが使われます。
どうぞ病院でホルモン補充療法をしてください。これが要点ですが,もう少し
お話ししましょう。

 更年期の心と身体の変化を生み出す原因は,社会的要因と精神的要因,およ
び女性ホルモンの激減ということになります。更年期障害はこの3つの原因が
微妙に絡み合いながら現れてきます。更年期障害になりやすい性格というのは,
几帳面,真面目,穏和,努力を惜しまない,世の中の秩序を重んじる,争いを
好まない,気遣いを怠らない,職責感が強い,などですが,見方を変えると余
裕がなく,神経質で,感情を抑制して,いい子的で,妥協的で,自己否定的で,
羽目を外せず,となります。社会環境要因は,子供の成長に伴う分離体験や,
近親者との分離体験,人間関係,地区やサークルでの立場などから虚脱感,空
の巣症候群,孤独感,環境的不安,葛藤,中年の危機,マネージャー症候群,
サンドイッチ症候群などがあります。女性ホルモンが減少することにより,月
経異常,血管運動神経障害,精神的障害,膣・尿道粘膜の萎縮,皮膚障害,閉
経後骨粗鬆症,心血管系疾患のリスク増大といったことが起こってきます。更
年期障害とは女性ホルモンの減少により起こる体の変調に,自律神経の働きが
ついて行かなくなるために起こります。

 それではこの対策としては,更年期とは,Change of LifeいやChance of Li
feと考えて,食事,運動,ストレス解消,自分だけ我慢せず,こもらず積極的
に生きるということになります。性格なんて,そう変わるわけではないので,
3R(レスト,リラクゼーション,リクリエーション)に努めましょう。

 このあとは,各種症状別対策をお話ししました。またホルモン補充療法につ
いて疑問点などをお話ししました。