「増えている大腸がん」


山口胃腸クリニック 山口 典男


 3人に1人はがんで死に,その総数は約30万人といわれています。胃がん
と子宮がんを除き,ほとんどのがんで死亡者が増えています。肺がんに次いで,
大腸がんは二番目に増えています。大腸がんがこれだけ急激に増えた理由は食
生活の欧米化,すなわち,高脂肪,高蛋白,低繊維の食事が関係しているとい
われています。

 大腸がんは,ポリープから発生するがんと大腸粘膜から発生するがんのふた
つのタイプに分けられます。ポリープは正常な粘膜が隆起したもので,発生し
た初めのころは良性であり,ほとんどはがん化しません。しかし,発育が速い
ポリープや比較的大きいポリープは,がん化する確率が高いことが分かってい
ます。

 一方,直接大腸粘膜ががん化するタイプは,表面が平坦だったり陥凹してい
るのが多く見られます。このタイプのがんは,小さくても進行がんになりやす
いので油断はできません。

 昔は,がんといえば死ぬ病気と思われていましたが,大腸がんに関しては決
してそうではありません。がんの進行程度(ステージ:T〜X期)別に術後5
年生存率をみますと,早期がんであるT期は90%以上生きます。特に,Mが
んであれば開腹手術をせずに,内視鏡的に切除(ポリペクトミー)が可能であ
り100%治ります。

 問題は,どうすればより多くの早期がんを発見できるかです。教科書には,
大腸がんの症状は血便,下腹部痛,便通異常などと書いてありますが,これら
の症状がみられる時はかなり進行した状態です。大腸がんでも早期には自覚症
状はなく,便に血が混じる程度や目にみえない微量の出血(潜血)が生じる程
度です。

 早期発見のための最も有用な検査方法は,便潜血反応検査です。これが陽性
であった人は内視鏡や注腸X線検査が必要です。また陰性であっても家族歴や
自覚症状のある人も精密検査が必要です。この検査法の感度は80数%です。
 10数%は偽陰性の可能性がありますので,年に一度は定期的にこの検査を
受けることが大切です。

 実際に,スクリーニングや検診で発見される大腸がんの約70%が早期がん
なのに対し,有症状者の場合約70%が進行がんで,その10数%に肝転移が
あります。それ故早期に診断することが大切ですけれども,そのためには検診
の受診者をもっと増やすことが必要です。

 ちなみに,皆さんの住んでいる八戸市の場合ですが,平成12年度の大腸が
ん検診の対象者は

 53,030人で受診者は12,715人あり受診率は24%でした。この
内,要精検者は545人で精検受診者は330人あり精検受診率は約60%で
した。精検受診結果ですが,129人は正常でした。127人にポリープが見
つかり,がんは17人に見つかりました。この年の大腸がんによる死亡数は7
2人です。この中には全く検診を受けていなかったり,症状があるのに忙しい
とか,検査が恥ずかしい,怖いなどで受診が遅れてしまった人もいるはずです。
大腸がんに罹っても早く見つければ死なずに済むのです。特に今日ここに来ら
れた方は心配ないと思いますが,身内の方や知り合いの方など毎年の検診と早
めの受診に心がけるよう勧めてください。