「更年期を上手にのりきるために」


倉本クリニック婦人科産科 倉本 雅規


 現在は情報過多の時代です。雑誌,週刊誌,本,テレビ,ラジオ,いろんな
講演,新聞,近所の井戸端会議,家族,友人などいろんなところから情報が入
ってきます。インターネットの Goo で更年期という言葉の入っているホーム
ページを探すと,27,337件もあります。情報過多の時代に生きる皆様は
情報の選択が必要になります。

 最近新聞でホルモン補充療法は危険だという報道が流れました。これはよく
調べると,肥満で,喫煙率50%高血圧35%の人がコントロールの米国のデー
タです。乳癌は日本の3倍,血栓症は日本の10〜20倍もある国です。その
まま受け入れられません。そして乳癌の発生率は,前から言われていた1.3
〜1.8倍を上回るものではありません。医療情報も慎重に選択する必要があ
ります。

 前に雑誌「クロワッサン」にあった「私はこうして更年期障害を克服した」
のなかには足の裏マッサージ器・カルシウム・裸体就寝・お灸・ライマブレス
レット・アロエエキス・太極拳・呉汁・カイロ・整体・朝風呂などなど……大
変多くの民間療法がでてきます。更年期障害はその起こりかたから見るとこれ
をすべてだめですと言い切れないのです。

 更年期障害の症状は不定愁訴といわれるようにあまりに多くてどこが原因な
のだろうかということになってきます。それはのぼせ・ほてり・多汗・冷え・
頭痛・腹痛・腰痛・関節痛・肩こり・しびれ・皮膚の痒み・疲れやすい・むく
み・めまい・動悸・息切れ・耳鳴り・食欲不振・便秘・下痢・頻尿・失禁・性
交痛・物忘れ・血圧の変化・いらいら・不眠・不安感・鬱状態ほかにもまだい
ろいろとあります。これらの症状に対し他の病気を否定して,更年期障害とい
うことになれば,医療機関では次のような治療が行われます。それは日常生活
の指導であり,薬物療法としてホルモン補充療法と漢方療法です。ホルモン補
充療法にはプレマリン,エストラダーム,エストリオールなどのエストロゲン
とプロベラ,ヒスロンなどのプロゲステロンが用いられます。漢方薬は,当帰
芍薬散,牛車腎気丸,加味逍遙散,八味地黄丸,桂枝茯苓丸などが使われます。
どうぞ病院でホルモン補充療法をしてください。これが要点です。

 更年期の心と身体の変化を生み出す原因は,社会的要因と精神的要因,およ
び女性ホルモンの激減ということになります。更年期障害はこの3つの原因が
微妙に絡まり合いながら現れてきます。更年期障害になりやすい性格というの
は,几帳面,真面目,穏和,努力を惜しまない,世の中の秩序を重んじる,争
いを好まない,気遣いを怠らない,職責感が強いなどですが,見方を変えると
余裕がなく,神経質で,感情を抑制して,いい子的で,妥協的で,自己否定的
で,羽目を外せずとなります。社会環境要因は,子供の成長に伴う分離体験や,
親近者との分離体験,人間関係,地区やサークルでの立場などから虚脱感,空
の巣症候群,孤独感,環境的不安,葛藤,中年の危機,マネージャー症候群,
サンドイッチ症候群などがあります。女性ホルモンは減少することにより,月
経異常,血管運動神経障害,精神的障害,膣・尿道粘膜の萎縮,皮膚障害,閉
経後骨粗鬆症,心血管系疾患のリスク増大といったことが起こってきます。更
年期障害とは女性ホルモンの減少により起こる体の変調に,自律神経の働きが
ついて行かなくなるために起こります。

 それではこの対策として,更年期とは,Change of Life いや Chance of Li
fe と考えて,食事,運動,ストレス解消,自分だけで我慢せず,こもらず積
極的に生きるということになります。性格なんて,そう変わるわけではないの
で,3R(レスト,リラクゼーション,レクリエーション)に努めましょう。

 このあとは,各種症状別対策を話しました。