「子どもの事故予防といざというときの応急処置」


くば小児科クリニック 久芳 康朗


 1歳以上の子どもの死因1位は不慮の事故であり,単なる「不注意」や「親
の責任」としてではなく,子どもの最大の健康問題として科学的に予防してい
くことが必要です。「目を離さないで」では,事故はなくなりません。少し目
を離しても大丈夫な環境づくりが大切です。

 大きな事故は氷山の一角であり,幼児の死亡1件に対して入院65件,外来
受診4,500件,家庭で処置10万件,無処置で様子をみる事故が19万件
おこっています。スウェーデンのレベルまで事故が減少すれば,年間500〜
600人の子どもの命を救うことができます。

 予防する必要性の高い事故は,1)重症度が高い事故(溺水,交通事故),
2)発生頻度が高い事故(誤飲,やけど),3)増加している事故,4)具体
的な解決方法がある事故です。

 溺水は特に重症度が高く不慮の事故死の2割を占め,0〜1歳の溺死の8割,
年間に70〜80人の乳幼児が浴槽で溺れて亡くなっています。洗い場から浴
槽の縁までの高さが50p以下の浴槽は転落する危険性が高いことを認識し,
2歳になるまで残し湯は厳禁とします。入り口に鍵や留め金をつけたり,子ど
もだけで入浴させないようにします。バリアフリーの考えで浴槽の縁が低い家
庭が増え,災害対策で残し湯が推奨されており,溺水の危険性はむしろ増加し
ています。ビニールプールやバケツなど,10cmの水深でも溺水は発生してい
ます。

 0〜19歳の不慮の事故死の6割は交通事故です。チャイルドシートは20
00年に義務化されましたが,事故例での装着率は低く,不適切な装着も多い
ようです。上端を思いっきり引っぱって動くのが3cm未満なら適切に装着され,
3〜10cmだと緩く,10cm以上動くときには役に立ちません。

 口径が39mm以下のものは誤飲したり窒息をおこすので,床面から1m以内
の場所には置かないようにします。タバコ誤飲の70%は0歳児で,8か月が
最も多く,電話相談件数の16〜17%で毎年トップです。根本的な対策は乳
幼児の環境からタバコを一切なくすことです。

 気管支異物はピーナッツが多く節分の後に多発します。3歳になるまでピー
ナッツは食べさせないようにし,放り投げて口に入れるような遊びもさせない
ようにします。

 ベビーカーからの転落予防にベルトを忘れないようにします。歩行器やクー
ファンは危険かつ不必要で,カナダでは歩行器の販売は禁止されています。

 毎年,子どもの3人に1人はやけど(熱傷)をしており,そのうち1割は医
療機関にかかり,その1割は入院,入院した人の1割は重症で,その1割は死
亡していると言われています。やけどの80%は家庭内で,そのうち50%は
台所でおきています。加湿器や炊飯器の蒸気によるやけどで手指の拘縮を残す
ことがあります。

 乳幼児突然死症候群(SIDS)は事故ではありませんが,乳児期の死亡原因の
第2位で,1)あおむけ寝,2)タバコは吸わない,3)なるべく母乳栄養に
するなどの予防対策により SIDS を減らすことが可能です。

 救急蘇生の ABC について一通り解説し,ハイムリック法,昏睡体位,やけ
どや出血・鼻出血の対処法などについても説明しました。

 家族の喫煙は誤飲や SIDS だけでなく,流早産,低身長,低知能指数,喘息
性気管支炎や中耳炎,受動喫煙によるガン,将来の喫煙習慣など,子どもの生
涯にわたって深刻な影響を及ぼします。家族全員の禁煙を強くお勧めします。

 予防接種で防げるはずの麻疹で年間約80人の子どもが亡くなっており,青
森県は全国ワースト1の流行県になりました。1歳の誕生日が過ぎたらすぐに
麻疹の予防接種を受けましょう。