「最近のがん治療〜肺がん〜」


八戸赤十字病院 菰田 研二


 はじめに 一昔前「がん」と診断されるとそれは死を宣告されたに等しい時
代がありました。今は診断も治療も発達し「がん」は治し得る病気となりつつ
あります。しかし依然として治しづらい「がん」も少なくはありません。肺が
んは治すことが難しい「がん」の一つです。毎年「がん」で亡くなられる人の
中で最も多い病気です。それでは実際日本でどのようながんが多く,どの位の
人ががんで亡くなられているのかお話ししたいと思います。

 最初にお断りいたしますが,ここに示すグラフや表は国立がんセンターや厚
生労働省のインターネットのホームページからのもので,それに八戸市の健康
増進課のデータを少し加えたものです。ですからここでお見せするスライドは
ビデオなどを除いてすべて個人でも見ることができるものです。このようにイ
ンターネットの普及により,個人が居ながらにして詳しい情報を簡単に入手す
ることができる時代になりました。多くの人がこれらの情報を早く利用できる
ようになってほしいと願っています。

 各グラフが示すごとくがんの死亡率は毎年上昇し続けています。ことに肺が
んは著明で胃がんは毎年下降するのと比べて対照的です。日本では毎年約100
万人の人が何らかの原因で亡くなっていますが,そのうち約30万人の人ががん
で亡くなられています。これは毎年青森市の人口が消えていくのに匹敵します。
このうち 6 万人が肺がんで死亡しています。がんの死亡率は男性と女性とで
は男性の方が約1.5倍高く,女性では死亡率のトップは現在も胃がんで次に大
腸がん肺がんと続きます。次に青森県と八戸市の話をしますと,青森県は男性,
女性ともがんの死亡率は全国平均と比べ高いのです。八戸市を見ましても肺が
んの死亡率は高く,ことに女性では死亡原因のトップになっています。平成13
年の肺がんの死亡数は全国が55,034人,八戸市が122人です。死亡率で表すと1
0万人に対しそれぞれ43.7と49.8です。仮に八戸市の肺がん死亡率が全国平均
と仮定すると死亡数は106人となり16人多い計算になります。不思議なことに1
0年前は八戸市も全国平均並の死亡率であったものがどんどん悪化して全国平
均から離れていっています。医療者も行政もその要因を早く見つけて対策を行
う義務があるのです。

 最後になりますが最近の肺がんの治療についてお話しします。がんの治療は
大きく分けて内科的治療と外科的治療に分けられます。内科的治療には抗がん
剤治療,放射線治療,免疫療法があり,最近では特にがん分子標的治療が脚光
を浴びました。副作用が少なくがん細胞だけに効くというふれこみで世界にさ
きがけ日本で初めて認可された薬も思いのほか副作用が多く,そればかりがマ
スコミなどで強調されてしまいました。これらの治療は始まったばかりで今後
大いに発達する可能性があると思われます。手術療法では胸腔鏡という器具を
用いてビデオモニターを見ながら手術が行われるようになっています。低侵襲
で体への負担を少なくするように工夫をしています。ビデオではその一部をお
見せしております。肺の表面が真っ黒いのは喫煙によりタールが沈着したもの
で炭粉沈着といいます。このような器具を使いながら治癒率を損なわずに切除
する肺の容積を少なくする縮小手術も患者さんに応じて行われています。術後
の痛みや生活の質(QOL)を悪化させない試みです。肺がんの治療成績はいく
つかの治療法を組み合わせて少しずつですが改善はしています。人間の体が細
胞からできていることを考えると歳をとってがんになることはある意味では宿
命と考えられます。しかしできるだけ「がん」になる時期を遅らせて健康で明
るい人生を送りたいものです。