「大腸癌について」


きよかわ内科胃・大腸クリニック 清川 哲丸


1.大腸癌の原因
 動物性食品や油脂類を多く摂るが繊維の摂り方の少ない国では大腸癌の発生
率が高く,穀類や野菜などを主体とした繊維の多い食事を摂る国では大腸癌の
発生率が低いことが各国の調査で明らかになってきました。
 従来,日本人には胃癌が最も多く,大腸癌は欧米に多い病気だったのですが,
食生活の欧米化に伴って大腸癌が急激に増えています。

2.大腸癌の症状
 血便,腹痛,便通異常,便が細くなるなどの自覚症状がありますが,これら
はある程度進行した癌の場合です。大腸癌の早期には症状がないことがほとん
どで,便の潜血反応も陰性です。

3.大腸癌の年齢分布
 大腸癌の発生は40歳代から増加し,60歳代の人が最も多くなっています。60
歳代付近の方で便潜血反応が陽性になったり,便通異常(便秘,下痢)などを
認める方はできるだけ早く精密検査(内視鏡検査)を受けることを勧めます。

4.大腸癌の好発部位
 大腸癌の約70%が直腸から S 状結腸までの約30cmに発生します。そのうち4
0%以上が長さ14〜15cmの直腸に発生します。男女比はほぼ同じですが,直腸
癌は男性に多い傾向があります。

5.大腸癌の発生
 大腸癌はポリープから発生する癌と,大腸粘膜から発生する癌のふたつに分
けられます。比較的大きなポリープは癌化する確率が高いことがわかっていま
す。大腸粘膜が直接癌化するものには,形は平らなものと,窪んでいるものが
あります。これらは小さくても進行癌になりやすいので要注意です。

6.早期癌と進行癌
 癌が粘膜下層までしか達していないものを早期癌といい,癌が筋層まで達し
ているものを進行癌といいます。癌が進行すればするほど癌の転移の確率が高
くなり,したがって生存率も下がります。癌の早期発見と早期治療がいかに大
切であるかがよくわかります。

7.大腸の検査の特長と欠点
a.血液検査……簡単で医師の技術を要しないが,早期発見には役に立たない
b.便潜血反応……簡単で医師の技術を要しないが早期発見には役に立たない。
痔でも陽性になる。
c.バリウム検査……医師の技術で正確さ,苦痛が大きく異なる。見落としが起
こりやすい。現在では補助的な検査でしかない。
d.内視鏡検査……癌の診断においては,現在の検査の中では一番確実である。
ポリープの切除も可能である。医師の技術で正確さ,苦痛が大きく異なる。

8.大腸癌の治療
 大腸癌の治療には,1内視鏡的治療 2外科的治療 3放射線療法 4内科
的療法(化学療法など)などがあり,癌の進行度などによって,単独で,又は
組み合わせて行います。最近では進行癌でも小さなものでは,開腹せずに,腹
腔鏡を用いた手術で対応できます。また,直腸癌の場合には,肛門括約筋を残
す肛門括約筋温存術が実施されるようになり,人工肛門をつけなくても済む場
合も多くなっています。