「中高年に多い眼の病気」


大島眼科 大島 真理


○老人性白内障
 白内障は,水晶体が混濁し視力が低下する病気で,老人性のものが90%以上
を占める。軽度の場合はまず点眼治療が行われるが,これはあくまでも進行を
抑えるものであり,根本的な治療は手術である。

 手術の時期は各人によって異なる。単に視力で判断するのではなく,自動車
の運転をするか,細かいものを見る作業をするか等患者の仕事や生活環境によ
り決定することになる。

○緑内障
 視神経が障害され視野が狭くなり,失明に至る病気である。最も多いのが開
放隅角緑内障であり,日本では40歳以上の人口の約 4 %いるといわれる。眼
圧の上昇が病因の一つであるが,日本人では正常眼圧緑内障が多いことがわか
ってきた。視野障害はゆっくり進むため気づきにくく,また,進行するまでは
視力も低下しないので,自覚症状に乏しい。視神経障害は治療を行っても戻ら
ないため,早期発見,早期治療が必要で,そのためには健康診断が大切である。
点眼治療が第一選択で,効果が不十分な場合レーザー治療や手術が行われるが,
いずれも進行を食い止めるのが目標となる。

○糖尿病網膜症
 糖尿病により網膜の毛細血管が障害され,眼底出血や硝子体出血を起こすも
のである。初期では自覚症状がなく,視力低下や飛蚊症等の症状で受診した時
にはかなり進行していることが多い。増殖網膜症になると硝子体出血や網膜剥
離を起こし,失明に至ることも少なくない。糖尿病網膜症はわが国の中途失明
の原因の第 1 位となっている。軽症のうちは経過観察でよいが,進行ととも
に内服治療,レーザー治療,さらには硝子体手術などが必要になる。内科的な
治療が一番なのはもちろんであるが,血糖のコントロールがよくても網膜症が
進行する場合もあり,たとえ眼症状がなくても定期的な眼底検査が必要である。

○網膜中心静脈分枝閉塞症
 わかりやすく言うと「眼にあたった」状態。静脈の閉塞部から出血するもの
で,症状は視力低下,飛蚊症,視野異常等である。出血の場所がよければ視力
は保たれるが,出血が中心部 (黄斑部)に及ぶと視力低下が高度となり,回
復困難となる。主な原因は高血圧,糖尿病,動脈硬化等であり,治療は内服治
療,レーザー治療が中心である。

 分岐部でなく根幹で閉塞した場合は網膜中心静脈閉塞症という。

○網膜中心動脈閉塞症
 動脈閉塞のため網膜が虚血に陥る。視力低下が著しい。

○加齢黄斑変性症
 黄斑部の機能が加齢等により障害される病気で,欧米では成人の失明原因の
第 1 位である。症状は変視症(ゆがみ),中心暗点,視力低下である。脈絡
膜から発生する新生血管の有無により滲出型と萎縮型に分類される。滲出型は
新生血管からの出血により網膜が障害されるもので,進行が早く視力低下も急
激である。萎縮型は老廃物の蓄積等によるもので,進行は緩徐である。

 治療は内服の他レーザー治療,硝子体手術が行われる。最近では光線力学療
法という特殊なレーザー治療も広まりつつある。もともと欧米に多い疾患であ
ったが,食生活の変化やパソコンなどの光刺激の増加により,日本でも患者が
増えてきている。