「丈夫な骨で元気に長生き」


あらい整形外科リハビリテーションクリニック 荒井 久典


 骨粗鬆症は骨の密度が低下し,疼痛や易骨折性を来たす病気です。我が国に
おける患者数は1000万人,うち実際に治療を受けている人は150万人と言われ,
潜在的な患者さんが多いようです。高齢の方の寝たきりの原因の第2位を占め
ており,予防や治療は重要な課題といえます。

【原因】主に破骨細胞と骨芽細胞のバランスが崩れることで発症します。特に
女性では閉経後の女性ホルモンの低下により顕著になり,50歳台の10人に1人,
60歳台の3人に1人,70歳台の2人に1人が骨粗鬆症といわれています。骨粗鬆症
の患者さんが多い家系の方,閉経が早かった方,やせ形の方は発症しやすい傾
向にあります。食事の問題,運動不足,ステロイド等の服用によっても起こっ
てきます。

【症状】腰背部
痛,身長低下(2・以上低下したら骨粗鬆症を念頭におく),亀背,易骨折性。
骨折しやすい場所は手関節,脊椎,股関節です。骨粗鬆症が高度になると転倒
しなくても骨折することもあります。

【診断】レントゲン写真と骨密度,骨代謝マーカーを用います。骨が一番強い
20代の頃と比べて骨密度が70%以下であれば骨粗鬆症と診断します。閉経後
の方は年に1度の骨粗鬆症検査をお勧めします。

【治療】薬物療法ではカルシウム剤,ビタミンD,ビタミンK,カルシトニン,
ビスフォスフォネート,塩酸ラロキシフェンなどが挙げられます。2006年骨粗
鬆症ガイドラインでは後二者のみgrade Aとされていますが,ビタミンD製剤は
筋バランスを整えて易転倒性を低下させ骨折を防ぐ効果が認められています。
痛みが強いときには消炎鎮痛剤や筋弛緩剤も併用します。

 痛みが取れると治療を中断してしまう傾向がありますが,痛くなくても,骨
密度が低ければ治療を続ける必要があります。

 薬物療法以外の治療としては物理療法も有効です。コルセット固定や腰背筋
訓練も行います。また,家庭で行う工夫も大事な治療の一つです。1食事療法
:1日800・のカルシウムを摂ることが勧められています。体内に入ったカ
ルシウムが骨に取り込まれるためにはビタミンDが必要です。2運動療法:骨
が強くなるためには骨に適度なストレスがかかる必要があります。散歩などの
軽い全身運動は骨に適度な刺激になって骨を強くしてくれます。3日光に当た
ることもビタミンDを活性化する上で大切です。4慢性に痛みがあるときは入
浴などで暖め,こわばった筋肉を和らげることも効果的です。食事や運動,日
光浴は骨粗鬆症予防という意味でも大切です。

【転倒予防】 転倒を予防するには2つの要素があります。1環境整備:段差
をなくす,床になるべくものを置かないなどしてつまずかない工夫をしましょ
う。段差をなくせないところは手すりなどをつけることも一案です。照明が暗
くて足下が見えにくいことや,不適切なはきものでの外出で転倒されることも
多いので要注意です。2身体因子:筋力低下,バランス能力の低下,歩行能力
の低下が3大要因です。適度な運動を心がけることは重要だといえます。睡眠
薬を服用している方も要注意です。股関節の骨折を予防するためのヒップパン
ツを装着することで骨折の危険性が1/10になったという報告もあります。

 組織的な転倒予防教室の整備もこれからの課題といえるでしょう。