「子どもに多いのど・鼻の病気とケア」


はかまだ耳鼻咽喉科医院 袴田 勝


 子どもに多いのど・鼻の病気における子ども特有の症状やケアについて話し
ました。

 アレルギー性鼻炎:最多頻度症状は鼻閉感で夜間に増悪します。また,鼻を
すする(水様性鼻漏),鼻をこする・ピクピクさせる・鼻に指を入れる(掻痒
感)という仕草がみられます。原因抗原としてはハウスダスト・ホコリダニが
代表的で,鼻粘膜の浮腫状蒼白腫脹が特徴的所見です。原因抗原の減量策では
蒲団の掃除機清掃やぬいぐるみの洗濯が効果的で,水泳後鼻症状増悪者には水
泳直前後のステロイド剤や抗アレルギー剤の点鼻が有効です。

 副鼻腔炎:1週以上の膿性鼻漏や湿性咳嗽が持続する場合に発症が疑われま
す。確定診断や治癒判定には鼻X線検査実施が必須で,発症予防は感冒の予防
と早期治療です。

 鼻出血症:出血は鼻中隔粘膜血管由来がほとんどで,その背景にアレルギー
性鼻炎や副鼻腔炎の存在があります。家庭での止血処置は,座位で頭部軽度前
屈し,鼻腔に綿球(軟膏塗付が理想的)または丸めた柔らかいティッシュを挿
入して指で鼻翼を外から圧迫し,軽く口呼吸をさせます。5分間位圧迫し,そ
の後,鼻部を冷却して下さい。

 扁桃炎:反復性(習慣性)扁桃炎が問題で,年4回以上,高熱で不登校とな
る場合は扁桃摘出術の適応となります。なお,溶連菌感染による扁桃炎ではリ
ウマチ熱発症予防のために解熱しても一定期間抗生剤の服用が必要です。

 扁桃肥大症:口蓋扁桃肥大のために嚥下障害や呼吸障害(末梢性睡眠時無呼
吸症候群)がある場合は扁桃摘出術の適応となります。

 アデノイド増殖症:アデノイドは3歳頃より増大し,6歳頃に最大となり,
その後縮小して15〜16歳頃に消失します。鼻呼吸困難から口呼吸やいびきが生
じたり,鼻汁貯留による副鼻腔炎の惹起,耳管開口部圧迫で滲出性中耳炎不改
善の際にはアデノイド切除が必要とされます。

 末梢性睡眠時無呼吸症候群:小児では扁桃肥大やアデノイド増殖が原因とな
り,呼吸時に胸骨部陥凹がみられることもあります。不十分睡眠のため,起床
しにくい・日中傾眠・集中力低下となります。扁桃摘出術+アデノイド切除術
の実施が症状消失に直結します。

 学童嗄声:小児や学童にみられる粘膜性の嗄声で,ガラガラ声やかすれた声,
弱々しい声として指摘されます。原因は声帯に結節が生ずるためで,声帯の安
静(可能な限り,発声を控える)によって多くは短期間で自然治癒します。し
かし,1週以上嗄声が持続したり,増悪する場合は治療が必要となります。な
お,変声期に結節が消失することもあります。

 以上,子どもに多いのどと鼻の病気の特徴やケアについて話しました。
 なお,これらの病気は家庭での対応次第で,その発症を予防することができ,
さらに症状が改善されることをご理解いただければ幸いです。