「糖尿病との上手な付き合い方」


向井田胃腸科内科医院 向井田 英明


糖尿病とは
 厚生労働省の調査ではH14年→H19年の5年間で糖尿病が疑われる人は690
→740万人,糖尿病の可能性を否定できない人は680→880万人,合計1,370→1,
620万人も増加している。
 糖尿病は血液中のブドウ糖が増える病気で(血糖値の上昇),この原因はす
い臓から分泌されるインスリンの作用不足である。これにはインスリン分泌低
下とインスリン抵抗性がある。
 慢性の高血糖状態が続くと種々の合併症を起こしてくる。糖尿病網膜症,腎
症,神経障害を三大合併症というが,網膜症は失明の原因となり,腎症は人工
透析の原因となる。神経障害がひどくなると,足の切断に至る場合もある。ま
た,脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患も2〜4倍起こりやすくなる。
 糖尿病の治療には食事療法,運動療法,薬物療法があるが,食事,運動療法
が基本である。注意しなければならないのは,食べ過ぎを運動で取り返すのは
いかに大変であるかということで,たとえば1kgやせるためにはフルマラソン
(42.195km)を3回は走らなければならない。
余談:高齢者について
 日本では65歳以上を高齢者,さらに65〜74歳を前期高齢者,75歳以上を後期
高齢者と定義されている。高齢化率7%以上を高齢化社会(昭和45年達成),
高齢化率14%以上を高齢社会(平成6年達成),高齢化率25%以上を超高齢社
会(平成25年達成予定)という。日本ほど高齢化率の高く,急速に高齢化が進
んでいる国はない。平成37年(2025年)には,生産年齢人口(15〜64歳)のほ
ぼ2人で1人の高齢者を支えることになる。また,生涯未婚率の増加,少子化
のため,一人暮らしの高齢者は今後増加の一途をたどり,このことは医療環境
に大きな影響を与えると考えられる。
糖尿病を防ぐことができるのか
 DPP(Diabetes Prevention Program)という臨床研究が行われた。対象は25
歳以上,BMI 24以上の耐糖能異常者3,234名で,これらを1)生活習慣改善群
(5%の減量と1日30分のウォーキング)_2)メトホルミン群(850-1,700・
/日)_3)プラセボ群の3群に割付て平均2.8年経過をみた。糖尿病累積発症
率はプラセボ群29%,メトホルミン群22%,生活習慣改善群14%で,生活習慣
の改善で糖尿病発症を50%減少させることができた。
糖尿病との上手な付き合い方
 糖尿病の治療に残念ながら王道はない。あくまでも治療の基本は食事療法,
運動療法である。
 P・P・Kとはぴんぴんころりの略で,健康で長生きしてころりと死ぬという,
誰もが望んでいる死に方である。残念ながら現在の日本における介護の期間(平
均寿命−健康寿命)は7.5年もある。介護が必要になる原因としては脳血管疾
患が1番多く,糖尿病ではその発生率が健常者の約3倍となる。そこで,個人
的には脳血管疾患の予防が特に大切と考えており,そのためには高血圧の治療
が重要である。糖尿病がない場合は140/90mmHg未満が目標だが,糖尿病の場合
には130/80mmHg未満,さらに糖尿病腎症がある場合125/75mmHg未満にする必要
がある。
 国民健康保険中央会が行った,「健康的なお年寄りはどんな生活をしている
のか」という調査では,元気なお年寄りは,一病息災ではあったが,生きがい
や長生きの意欲をもち,自分は健康だと思っていた。糖尿病と上手に付き合う
ためには,生きがいを持つことも大切と思う。