「高齢者の口の特徴」

三浦大輔=たものき歯科医院院長、八戸市在住

 高齢者の歯の本数は、年齢と共に少なくなる傾向があります。しかし、その
速度は個人によって異なります。また、たとえ本数が同じでも、失った歯の位
置は千差万別です。

 歯が抜けたところは、歯の機能を人工的に回復する処置を施して機能回復を
するのですが、そのための装置は完全オーダーメイドです。

 歯を守り、装着した装置を長い間機能させるためには、口の中全体を清潔に
保つことが大切です。そのために自分自身で口の中の環境をよく観察し、理解
する必要があります。

 高齢者の運動機能は、加齢に伴い筋力が弱くなったり、病気の後遺症などを
伴なったりして、若いころに比べて低下します。それに拍車を掛けるのが機能
する歯数の減少です。いくら歯があっても、かみ合う歯が残ってなければ機能
しないのです。

 このことから高齢者の食事は、食べやすいように、消化されやすいように配
慮された献立が多く、柔らかいものが中心となります。素材のままの食品より
加工された食品が多くなり、食べ物自体が口の中に食べカスを残す原因を作っ
てしまうのです。

 また高齢者は、虫歯のリスクが高く、痛みに対する反応も低下しているため、
気付いた時には歯が崩壊しているケースが多々見られます。このリスクを増長
するのが、唾液(だえき)分泌量の減少です。

 加齢による減少、病気による減少に加え、最近多くなってきたのが服用薬剤
の副作用による唾液の減少です。量が少なくなると唾液が口の中を洗浄する作
用(自浄作用)が発揮されにくくなり、汚れや歯垢(しこう)が付きやすくな
ります。

 以上のことから、高齢になるほど、健康な生活を送るためには、口の中を清
潔に維持する必要があります。