「口の働き」

加賀俊樹=かが歯科医院院長、八戸市在住

 「口の機能」は、お母さんのおなかの中にいる時から学習が始まり、3〜5
歳前後で習得すると言われています。つまり、最初から当たり前にできたので
はなく、成長とともに習得した機能です。段階的に習得していくものなので、
最も適切な時期があり、それを過ぎてしまうとうまく習得できません。

 また、口の機能はほとんどが筋肉によって行われるので、使わなければ退化
していきます。「食育」は子どもだけでなく大人にとっても大事で、一度獲得
したこれらの機能が低下しないように努めなければなりません。

 口の機能は大きく以下の五つに分けられます。

 ▽第1の機能「摂食」 人間や動物は、自ら生活エネルギーをつくることが
できません。そこで、自分の生命を維持するため食べなければなりません。こ
れが口の機能として最も重要な機能です。

 ▽第2の機能「脳に情報を送るセンサー」 乳幼児は5〜6カ月くらいに、
いろいろな物を口にくわえたりかんだりします。これは、他の器官が発達して
いないために口を使って周囲の物を確認し、学習する行為だと言われています。
その刺激が脳の働きを活発にし、発達を促します。

 ▽第3の機能「呼吸」 動物の呼吸の基本は「鼻から吸って、口から吐き出
す」ことです。しかし、人二足歩行となり、喉の形が変化し、口呼吸ができる
ようになっています。これは、「言葉の獲得」という大きなメリットとなりま
したが、デメリットとしてむせたり誤嚥(ごえん)したりしやすくなりました。
 動物は鳴き声を出しますが、言葉になりません。正しく発音するためには唇
や口の形・開き具合、舌の位置などを正しい状態にする必要があり、歯がそろ
っていることも重要です。また、日常的に口呼吸すると、口が乾燥して口の健
康には非常に良くありません。

 ▽第4の機能「運動」 第1〜第3までの機能を行う上でとても重要です。
食べることも呼吸も関係する筋肉が発達し、複雑な動きを生み出す原動力とな
るからです。さらに、顔の筋肉の発達に伴う顔の細かい動きは、表情となって
表れます。

 ▽第5の機能「唾液・消化酵素の分泌」 口腔(こうくう)洗浄、殺菌、消
化促進、口・喉・食道などの乾燥防止、胸焼け(逆流性食道炎)の防止はほと
んどが唾液の作用と機能になりますが、口が機能することにより分泌量が多く
なるのです。

 歯を失うことは第1〜第5の機能を低下させる一番の原因となります。歯を
失わないように、失ってしまったら補うようにかかりつけの歯科医院を持ち、
定期検診しましょう。