「低医療費政策」

本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住

 【医療費亡国論】
 「医療費が増えて大変だ」ということで、「皆保険制度」が始まって以来、
医療費は抑えられています。例えば、図に示したような1981年を100と
した「賃金指数」や「消費者物価指数」と「医療費の改定率」を見ても、バブ
ル期を除いて、マイナス成長でほとんど据え置かれているのが分かると思いま
す。

 医療費の自然増とされる、医療費の技術の進歩、あるいは疾病構造の変化に
より、高齢化で増加した科などは徹底した抑制策がきめ細かに行われています。

 【地域医療崩壊】
 これだけ厳しい「医療費抑制政策」を長期間受け続けた結果、近年は公的病
院の赤字や数の削減、深刻な勤務医師不足による長時間労働などが明らかにな
ってきています。

 地域の多くの医療機関も規模の縮小を余儀なくされています。皆さんの中で
も、一昔前に比べて入院するのが難しくなり、しかも入院期間が短くなったと
感ずる方も多いでしょう。これらは地域からベッドがなくなってきているから
です。有床診療所も減り続けています。

 【さらなる医療の合理化計画】
 現在、さらなる「医療の合理化」が行われつつあります。地域における赤字
の公的病院の廃止や診療所化、療養ベッド削減。慢性期医療(リハビリなど)
の介護への移行や、品質に不安のある後発医薬品の使用促進もあります。指導
監査の強化では、医師の自殺者も出てきています。

 【医療にもっと投資を】
 財源次第ではあるわけですが、二つの選択肢があります。現在の日本のよう
に「公的皆保険制度」を維持するのか、あるいはアメリカのように「低負担低
福祉国」として、個人の自由で「混合診療解禁」でも何でもありにするのか。

 アメリカ型になれば、皆さんに医療は十分行き渡らなくなります。混合診療
解禁にすることのデメリットの方が明らかに大きいと思います。いずれにしろ
現在は「低負担低福祉国」へまっしぐらです。このままでは「アメリカの医療」
となってしまうでしょう。

 より医療への投資を増やしていく必要があります。せめて中負担中福祉国を
目指すべきでしょう。