「心房細動の抗凝固療法@」

木村俊昭=あおば循環器内科クリニック院長、八戸市在住

 心房細動という不整脈では心臓内部に血栓が高率に作られ、それが血管を通
して脳に運ばれて脳塞栓(そくせん)症を引き起こします。これを心原性脳塞
栓症といいます。

 心原性脳塞栓症を防ぐには不整脈としての心房細動治療のほか、血栓を作ら
せない治療が必要です。これを抗凝固療法といいます。

 抗凝固療法には今までワルファリン(ワーファリンR)という薬しかありま
せんでしたが、最近は新薬が開発されました。これから5回シリーズで抗凝固
療法の最近の話題をお話しします。

 従来から使われているワルファリンは現在でも健在です。ワルファリンは血
液中のビタミンKの働きを抑制することにより血栓形成を防ぎます。しかし、
ビタミンKはさまざまな食品に含まれるため食事制限が必要です。その代表格
は納豆です。

 納豆に含まれるナットウ菌が腸内でビタミンKを産生し、それがワルファリ
ンの働きを抑えてしまうため納豆は禁止です。またクロレラなどビタミンKを
大量に含む食品も禁止されます。さらに、ワルファリンの作用に影響する薬剤
も多く、使用するワルファリン量も個人差が大きいので、管理する医師の経験
も必要です。

 一方、ワルファリンにはよい面もあります。プロトロンビン時間という血液
検査を行うことで、適切なワルファリン量を決めることができます。さらに、
万が一、ワルファリンが効きすぎて出血しても、ワルファリンの拮抗(きっこ
う)剤があるため最悪の結果を回避しやすいのです。

 最近、食事制限のいらない新薬が発売されました。直接的トロンビン阻害剤
としてのダビガトラン(プラザキサR)と第Xa因子阻害剤であるリバーロキ
サバン(イグザレルトR)です。いよいよ抗凝固療法の戦国時代に突入しまし
た。次回はこれら新薬についてお話しします。