「心房細動の抗凝固療法A」

 今回は新薬として昨年認可されたダビガトラン(プラザキサR)についてお
話しします。

 血液が固まる過程は解明されており、血液内であたかもドミノ倒しのように
化学反応が進んで血栓が作られます。ワルファリンはこれらのうち、ビタミン
Kを介する反応を抑えることで血栓形成を抑制します。一方、ダビガトランは
血栓が出来上がる最終段階の反応を抑えることで作用します。結果的には同じ
ですが、その過程がまるで違うため、食事や内服薬の制限が異なります。

 ダビガトランの特徴は、ほぼ全てが腎排泄(せつ)、腸からの吸収が悪い(生
体利用率が低い)ことです。まず、腎排泄が主ですから、肝機能の悪い方でも
内服可能です。

 しかし、腎機能の悪い方は体内貯留が問題となり慎重投与ですし、人工透析
中の方は服用できません。生体利用率が低いので多めの量が必要で、体内貯留
時の大出血リスクが大きくなります。

 腎機能が低下しがちな高齢者ではダビガトランが効き過ぎやすく、その投与
量は少なめに設定されています。

 さらに生体利用率が低いため、飲み忘れずに1日2回の服用が必要です。大
出血が起きたときには内服を止め、半日すればダビガトランの効き目がなくな
ります。

 その上、ダビガトランにはワルファリンでのプロトロンビン時間検査のよう
な、管理指標となるよい検査方法がありません。ワルファリンでは採血で投与
量の微調整が可能で、その分手間がかかります。

 一方、ダビガトランではそれがなく手間はかかりませんが、いまどの程度効
いているかを直接知る方法がないため、副作用を未然に防ぐことが困難です。
この点は今後の検査方法の進歩に期待しましょう。