「心房細動の抗凝固療法D」

 今回は抗凝固療法と冠動脈ステントについての独り言です。

 近年、狭心症治療として冠動脈内にステントを留置する手技が盛んに行われ
るようになり、狭心症や心筋梗塞の管理体制が大変進歩しました。ステントに
は再狭窄(きょうさく)という問題がありますが、これも薬剤溶出性ステント
の登場により再狭窄率が大きく低下し、一つの決着がついたかに見えました。

 旧来から使われているステントは薬剤が塗られておらず、ベアメタルステン
トと呼ばれます。どちらも留置術当初はアスピリンなどの抗血小板剤を服用し
ます。

 ベアメタルステントではいずれは抗血小板剤を中止できますが、薬剤溶出性
ステントでは6カ月から1年間、場合によっては一生涯、抗血小板剤を服用し
なければなりません。

 一方、ダビガトランやリバーロキサバンでは、アスピリンなどの抗血小板剤
を併用すると、大出血の危険が大きくなることが知られています。

 狭心症や脳梗塞の患者さんではアスピリンなどの抗血小板剤が必要ですが、
心房細動を発症したときは、出血リスクが高まるため新薬の使用を断念するか、
出血リスクを承知で両剤を併用するしかありません。

 これはあくまで私個人の感想ですが、ステント留置が必要な狭心症患者さん
には、現在のように薬剤溶出性ステント一辺倒ではなく、旧来から使われてい
るベアメタルステントを見直していく必要があります。

 以上、さまざまな角度から抗凝固療法を見てまいりましたが、来年以降も各
社から次々と新しい抗凝固剤が発売される予定です。この分野の今後の発展に
期待して、この連載を終えます。