「医療機関の過度の機能分化」

本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住

 厚生労働省は「一般病床の機能分化の推進についての整理(案)」を提示し
ました。医療機関を急性期医療、亜急性期、回復期、療養、在宅までの流れで
明確に機能分化するという考え方です。開業医であれば「総合医」や「家庭医」
構想で、レントゲン機器も置かない慢性期医療のみを担う零細化した診療所の
みにしようとしています。

 【機能分化は医療機関の機能低下そのもの】

 「機能分化」とは、同時に個々の医療機関の持つ機能を絞って単能化するこ
とでもあります。いわば個々の医療機関の機能の低下です。

 結果として手術などの待ち時間が増大し、急性期を過ぎた患者さんのご家族
は、地域で空いている医療機関探しに翻弄(ほんろう)されることになります。
手術したら抜糸も済まないうちに追い出されたり、あるいは亜急性期や慢性期
医療を担う医療機関へたらい回しされたりします。

 地域でおのおのの病院が機能別に十分確保されているわけではありませんか
ら、患者さんが病期により移動するたびに、引き受け先のない、医療難民、介
護難民が増えることになります。

 【市場の強直化により地域で医療サービスが十分提供できなくなる】

 医療機関を過度に機能分化すれば、個々の医療機関の持てる機能を絞りすぎ
ることになり、かえって効率は低下します。「医療サービス市場の強直化」を
招き、旧ソ連の計画経済のような官制市場で、いわゆる「市場のミスマッチ」
が起こるでしょう。

 急性期病院が慢性期医療をある程度担っても良いし、診療所が急性期医療を
担っても良いはずです。各施設である程度機能を多機能化しておかないと、か
えって無駄の多い困ったことになります。

 診療所にしても慢性期を担う無床で零細な所から、検査機器から何でもある
重装備診療所、有床など多様な医療サービス形態がなければ、地域の多様な医
療ニーズに到底応えられないでしょう。