「ドクターヘリの経費」

今明秀=八戸市立市民病院救命救急センター所長

 国内11カ所で行われたドクターヘリ事業の調査では、救急車による搬送と
比較してドクターヘリは外傷死亡を27%、重症後遺症を47%減らすことが
できたと報告しています。

 2001年から始まったわが国のドクターヘリ事業ですが、なぜ青森県では
ドクターヘリ導入にこれほど時間を費やしたのでしょうか。

 04年、八戸市立市民病院はドクターヘリ導入を青森県に打診しています。
しかし、財政面で実施不可能との返事でした。

 ドクターヘリは、年間1億7000万円で運営されます。これには機体のレ
ンタル代、人件費、ガソリン代、点検費用、保険代が含まれます。1機が年間
300から400回出動することを想定した計算です。

 昨年度まで国と県が半分ずつ負担していたのですが、なんと今年度から県の
負担が約4250万円に減ることになりました。これまでの半額負担で青森県
はドクターヘリを飛ばせるのです。1回出動当たりの県の負担金は約12万円
前後の計算になります。

 通常、皆さんの町を走っている救急車は1台4000万円です。救急車出動
には多くの人件費や点検費用が掛かります。1回出動に、東京で4・5万円、
名古屋で6・7万円、千葉で13万円です。

 1台当たりの出動件数が多いほど、1回の費用が少なくて済みます。とする
と、青森県は千葉以上になることは確実です。青森県の救急車1回の出動には
推測で15万円以上は掛かるのではないでしょうか。この金額はすべて自治体
が負担するのです。

 救急車で運ばれる傷病者の中で、重症者は12%です。それに対してドクタ
ーヘリでは重症率は70%です。このことからも、費用に対して命を救う効果
はダントツ、ドクターヘリが優れていることが分かります。

 ドクターヘリは、救急車と同じように患者負担はありません。無料です。ド
クターヘリは公共事業です。しかし搬送中に治療を行うわけで、その医療費は
国民健康保険などの範囲内で皆さまに負担してもらいます。

 静岡県、千葉県では、県内を2機のドクターヘリが飛んでいます。北海道で
はもうすぐ3機体制になります。先進的な県は、ドクターヘリの有効性、経済
性を十分認識しているのです。

 そしてわが青森県では、全国で18番目のドクターヘリがついに始まりまし
た。18番! エースナンバーですね。



「提供・今明秀医師」