「アタマジラミ」

佐藤俊=たんぽぽ皮フ科クリニック院長、八戸市在住

 アタマジラミは自覚症状に乏しいため、知らず知らずのうちに頭髪の直接接
触、あるいはコート、マフラー、タオル、寝具などを介して他人に感染するこ
とがある。そのため、頭同士を接触して遊んだり寝たりする小学校低学年以下
の子供に多く、市中でも散発的ではあるが、時々集団発生が見られる。

 アタマジラミの成虫の体長は2〜4ミリで、全体が褐色で翅(はね)はない。
頭髪をよく観察すると、この虫体がうごめいている様子を見て取れる場合があ
る。

 これよりも認めやすいのは、頭髪に付着した卵である。卵は楕円(だえん)
形、長さ0・8〜1・2ミリ、乳白色で、頭髪にセメント様物質で膠着(こう
ちゃく)されているため、簡単には取れない。顕微鏡検査にて卵の確認が可能
で、アタマジラミの感染の証拠になり得る。

 まれに、かき傷からの細菌感染により膿痂疹(のうかしん)や毛包炎を生じ
ることがあるが、軽度のかゆみがあるか、全くない場合がほとんどである。従
って、治療は虫体もしくは卵を早急に駆除することが主体となる。

 頭髪の剃毛(ていもう)が効果的であるが、実施は困難なことが多い。実際
には、まず目視可能な卵は、はさみ等を使い、卵の付着した髪ごと除去し、殺
虫効果のある市販のシャンプー(スミスリンR)で3、4日おきに3、4回、
頭髪を洗浄する。すきぐしも同梱(どうこん)されており、物理的に除去する
目的で、同時に使用するとよい。

 宿主を離れても生存する成虫や卵は、60度の温水に5分間漬けると完全に
死滅させることができる。従って、使用したシーツ、枕カバー、下着、衣類は
いったん、この条件下に維持した後に洗濯する必要がある。また、ドライクリー
ニングも有効である。

 園児や児童にアタマジラミの発生が確認された場合には、すでに広範囲にま
ん延している可能性が高い。1人だけが駆除できても、すでに感染している人
から再感染させられてしまう可能性があるので、各施設での一斉駆除が大切で
ある。

※「スミスリンR」のRは○囲み