「がん検診」

阿部一郎=ABEビルクリニック院長、八戸市在住

 1930年から2000年までのわが国の死亡率の推移を見ると、1945
年ごろは結核など感染症が圧倒的に多く、その後、急激に感染症の死亡率が低
下。55年ごろには脳血管疾患が1位となり、しばらく1位が続きました。

 その間に次第に増加してきた悪性新生物(がん)が81年に死亡率1位とな
り、その後も増加し続け、2000年の時点での死亡率は人口10万人対で1
がん240、2心疾患120、3脳血管疾患110となっています。

 現在もがんは死亡原因の1位。08年度の統計では、がん死亡者数は34万
3千人で「日本人の3人に1人が、がんで死亡」。継続的に医療を受けている
がん患者は142万人に上っています。

 地域別に見ると、07年のがん年齢調整死亡率(75歳未満)の上位5都道
府県は、1青森県2佐賀県3和歌山県4大阪府5鳥取県となっており、青森県
はワースト1です。ちなみに年齢調整死亡率とは、年齢構成の異なる地域間の
死亡状況を比較分析しやすいように補正した比率です。

 さて、06年がん対策基本法成立、07年4月同法施行、がん対策推進協議
会設置、同年6月がん対策推進基本計画策定と、政府によりがん対策が法律化
され、この法整備の下にがんの予防および早期発見の推進、がん医療の機関整
備、研究の推進を図ることとなりました。

 3年に1回行われる大規模な国民生活基礎調査のデータによると、07年の
がん検診の受検率は、胃がんは男性32・5%、女性25・3%、肺がんは男
性25・7%、女性21・1%、子宮がん21・3%、乳がん20・3%、大
腸がんは男性27・5%、女性22・7%。今後、国として効果的かつ効率的
に受検勧奨すべき対象者を考慮しつつ、11年度末までに50%以上を目標と
することとなっています。

 特に本年度は経済対策の一環として、がん検診に関連する予算が増額されま
した。この中には一定の年齢の対象者に無料のクーポン券を配り、それに対し
て予算が付くような、地方自治体に負担が掛からない対策も含まれています。

 今後はこのような財政支援が一時的な補正予算ではなく、一般対策費として
認められるように働き掛けていきたいと思います。

※がん死亡率(2000年)と、がん年齢調整死亡率の順位を示す数字は、実
際には丸囲み数字となります