「無保険者の増大」

本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住

 全国民は公的健康保険に入ることとされています。しかし保険証(正式には
被保険者証)カードの裏面には「特別の事情がないのに保険料(税)を滞納し
た場合、この証を返還していただくことがあります」と書かれています。

 国は財源不足を理由に、患者さんの負担を徐々に増やしています。その結果、
一部負担金や保険料もアップされています。なお、一部負担金が増加しても国
などの保険者の負担割合が減るだけで、それが直接、医療機関の収入になるわ
けではありません。

 政府は2000年度から、滞納者への「被保険者資格証明書」交付を市町村
の義務としました。資格証明書は、災害など法令に定める特別な事情がないに
もかかわらず、保険料を滞納して1年以上が経過したとき、通常の保険証の返
還と引き換えに交付されるものです。

 滞納理由に関して弁明の機会は与えられています。医療機関を受診した際は、
いったん医療費の全額(10割)を支払った後に役所に申請し、自己負担の割
合に応じて給付を受けることになります。

 「特別の事情」には次のことが該当します。
1)世帯主がその財産につき災害を受け、または盗難にかかったこと
2)世帯主または生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したこと
3)世帯主がその事業を廃止し、または休止したこと
4)世帯主がその事業につき著しい損失を受けたこと
5)これら四つに類する事由があったこと

 以上の事情で保険料を納付することができないと認められる場合、公費負担
医療の対象者等も同様に保険証返還の対象から除外されます。

 経済不況などを背景に、全国で保険料を滞納する方が増えています。200
8年9月の厚労省調査では、全国の保険料滞納世帯は約380万世帯で、全世
帯の18・6%に当たります。そのうち約33万世帯に資格証明書が発行され
ています。

 青森県内は滞納3万7372世帯、資格証明書発行532世帯。八戸市内は
滞納8679世帯、資格証明書は494世帯に発行されています。しかも徐々
に増加してきています。実質、皆保険制度は崩壊しつつあります。

 緊急的な対応として、資格証明書の交付世帯であっても、15歳以下の子ど
もについては有効期限6カ月の短期保険証を交付することになりました。この
取り扱いにより、世帯主の保険料滞納の状況にかかわらず、子どもの医療機関
への受診機会が保障されます。詳しくは市町村の担当課にお問い合わせくださ
い。

 抜本対策としては、医療の財源をしっかり確保して、国民の皆さんの保険料
や一部負担金を減らすことが第一です。皆保険制度は社会のセーフティーネッ
トです。混合診療の導入や無保険者増加によって制度が破たんすれば、お金持
ちしか医療を受けることができなくなります。