「インフルエンザ迅速検査」

高橋秀知=高橋こどもクリニック院長、八戸市在住

 「インフルエンザの検査をしてください」「学校の先生から検査してきなさ
いと言われました」。高熱のため診療所を受診する患者さん方は真っ先にこう
言って来院します。

 「検査しなくても、学校でも流行しているし、臨床的にもインフルエンザだ
と思われますので…」。こういう患者さんとのやりとりが最近多く見られます。

 確かに患者さんが不安で一刻も早く診断・治療をしてもらいたい気持ちは理
解できますが、インフルエンザ迅速検査は万能ではありません。

 迅速検査は発症してから約半日経過して、ある程度鼻や咽頭(いんとう)粘
膜のウイルスの量が増えてからでないと陽性になりません。

 また、現在流行している新型インフルエンザに対する迅速検査の感度が40
〜70%と低いため、実際に濃厚接触で確実にインフルエンザだと思われる人
の検査をしても陰性になることがしばしばあります。

 だから、検査で陰性であっても「インフルエンザではない」と否定すること
はできないのです。

 新型インフルエンザが猛威を振るっている今、流行している地域、職場、学
校、保育園・幼稚園などでインフルエンザ様の症状がある人は、わざわざ検査
しなくても臨床的にインフルエンザと診断し、抗インフルエンザ薬を含む必要
な治療を行うことができます。A型でもB型でも新型でも治療法には変わりあ
りません。

 国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「新型インフルエン
ザの診断・治療については迅速検査キットや抗インフルエンザ薬が行き渡って
いることは診断・治療については大きな進歩だが、迅速検査をしないと自信を
持ってインフルエンザと診断できない医師が増えた。患者側も検査をしないと
診断に納得しなくなった」とし、迅速検査に頼り過ぎることで弊害が生じてい
ると指摘しています。