「医療費亡国論」

本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住

 高齢化の進展に伴い、このまま医療費が増え続ければ大変だ。財政を圧迫し、
国家を滅ぼす。医療費は抑えるべきだ−。こういった考えを「医療費亡国論」
といいます。過去において、厚生省(現・厚生労働省)の官僚が主張しました。

 ここ20年くらい、この考え方でさまざまな医療費抑制策が実行されました。
その結果、国民医療費がマイナス成長となった年も複数ありました。「医療費
の自然増」とされる「医学の進歩」まで否定されています。

 現在、地域から病院が消えつつあります。全国で閉院が相次いでいます。最
近入院した方は経験しているでしょうが、入院した場合、在院日数短縮のため
に、入院と同時に退院日まで言い渡されています。あるいは、抜糸もしないう
ちに退院を迫られることもあります。

 医師数は制限され、新しい医師臨床研修制度の導入も相まり、地方、特に青
森県では医師が極端に不足しだしています。その結果、病院の診療科の縮小も
余儀なくされています。医師は過重労働で悲鳴を上げています。まさしく「医
療崩壊」といってよい状況です。

 そうはいっても財源が乏しい中、確かに医療だけ別世界≠ナは済みません。
そこで、医療と経済の関係を少し考えてみましょう。

 医学の進歩は、本当に医療費を押し上げるのでしょうか。

 現在「高額医療」といわれているものの内容は主に、血友病などの「血液疾
患」や「臓器移植」「遺伝子治療」などです。

 血友病の治療が高額なのは、血液製剤を使うためです。血液製剤は最近一部
合成されつつありますが、残念ながらまだ高価です。しかし医学の進歩により、
遠くない将来に「人工血液」ができれば費用の大幅な減少が期待できます。
「人工臓器」も同様です。

 よって、医学の進歩などの技術革新により、際限なく医療費が増加するとは
限りません。