「世界のタバコ事情」

久芳康朗=くば小児科クリニック院長、八戸市在住

 毎年小学校で実施している喫煙防止授業の感想文を読むと、必ずと言ってい
いほど「なぜそんなに害のあるタバコが売られているのか」という疑問を書い
てくれる子がいます。

 タバコは合法的な嗜好品と言われていますが、医学的に考えれば依存性のあ
る毒物で常習者の約半数が死亡するのですから、禁止薬物に指定されても何ら
不思議ではありません。

 実際に世界でただ一カ国、タバコのない禁煙国家があります。アジアの仏教
国ブータンです。それだけでなく、オーストラリア、タイ、英国といった国々
で喫煙率ゼロを目指した政策が実施に移されようとしています。

 オーストラリアでは、現在でも千円前後のタバコ価格を1600円にすべき
と政府の特別委員会が報告しています。

 英国では、タバコのパッケージを白箱にして個人宅や車内での禁煙も推進す
る法律が準備されています。

 タイではショッキングな画像警告のパッケージだけでなく、タバコそのもの
を隠して販売することが義務づけられています。フィンランドでもタバコの陳
列販売を禁止する法律が準備されているなど、タバコ包囲網は最終段階に達し
ていますが、日本だけがトラックを何周も遅れたランナーであり続けています。

 2006年に「禁煙は愛」を訴えて日本列島を徒歩で縦断したオーストラリ
ア人看護師のマーク・ギブンズさんは、八戸市内の小学校で小学生の質問に対
し「喫煙者はカワイソウ、真実を知らされないで死にゆく人たちだ」と答えま
した。現在のタバコ対策後進国という状況には、歴代の政府だけでなくマスメ
ディアにも大きな責任があると言えます。

 タバコは百害あって一利なしと言いますが、喫煙者が一利あると信じていた
「ストレス解消」が幻想であるとわかったいま、タバコのない社会を作り後世
に禍根を残さないことは、私たちに課せられた責務なのです。