「日本医師会B」

【必要な社会保障費の確保】
 皆さんが安全で質の高い医療や介護を求めるならば、それに必要な社会保障
費を確保しなければなりません。しかし、患者の自己負担はもう限界です。ま
た、生活苦から国民健康保険料を支払えない滞納者が増え続けています。その
ような人たちは、治療が必要と分かっていても医療機関への受診を控えるよう
になり、さらに病状を悪化させています。
 もちろん、無駄な歳出を削減することは必要ですし、保険料負担の見直しも
重要ですが、それだけでは財源確保は不可能です。「自分が政権にある間は消
費税を上げない」という政治家たちの発言は、選挙目当ての責任逃れでしかあ
りません。

【混合診療解禁という麻薬】
 かつて小泉政権は、日本の医療に市場原理を導入せよと迫る米国に押され、
混合診療の解禁を閣議決定しましたが、このときは日本医師会が中心となって
混合診療反対の1700万人の署名を集め、全面解禁は阻止されました。
 しかし、いったん頓挫した混合診療の問題が、最近、再び政治のテーマとし
て取り上げられています。
 混合診療とは、公的保険で認められている保険診療と、認められていない保
険外診療を同時に受けることです。たとえば、高血圧の治療を保険診療で受け
ながら、同じ施設で美容外科手術を自費で受けることは混合診療にあたり、禁
止されています。
 ただし、先進医療について安全性・有効性を評価中の場合などは、混合診療
がすでに認められています。医師会が反対しているのは混合診療の「全面解禁」
です。
 もし混合診療が全面解禁されると、公的保険のきかない先進医療や新薬が自
費で受けられますが、それを負担できるのは高所得者に限られます。
 一方、医療費負担を抑えたい国は先進医療や新薬を公的保険に組み込もうと
はせず、結果として、公的保険で受けられる医療の範囲は狭められることにな
るでしょう。