「ドーピング防止活動と薬剤師A」

 「ドーピング」と聞いて、どのような薬物を想像しますか?
筋肉増強剤や興奮薬などが思い浮かぶ方が多いでしょうか?
また、このような薬物は特殊な物といった印象をお持ちの方も少なくないかも
しれませんが、そんな事はありません。身近な医薬品やサプリメントなどにも
含まれています。

 2010年2月11日の時点で、国内におけるドーピング防止規則違反は
11件あります。11件中3件が「メチルエフェドリン」という、医療用医薬
品や市販の感冒薬などで広く使用されている物質でした。

 また「プレドニゾロン」という、これも医療の現場で大変広い範囲で使用さ
れている物質や、ぜんそくの治療に対し世界中で最も多く処方されている「サ
ルブタモール」という気管支拡張剤での違反事例もそれぞれ1件ずつあります。

 ちなみに、「メチルエフェドリン」は中枢神経の興奮作用を、「プレドニゾ
ロン」はステロイド剤が持つ筋肉増強作用を有しており、禁止薬物に指定され
ています。

 「サルブタモール」には骨格筋の強度と耐久性を増す効果があり、こちらも
2010年まで禁止薬物に指定されていましたが、一部の剤刑が2011年よ
り除外されました(詳細は次回)。

 メチルエフェドリンを例に取ると、これが含まれた感冒薬を一時的に服用し
たからと言って記録が劇的に伸びるという事はまず考えられません。
また選手側もそれを期待してではなく、あくまで「感冒症状の緩和」が目的で
服用してしまっていたのがほとんどとの事です。

 このような、決して悪意があったのでは無いにも関わらず禁止薬物を使用し
検査で引っかかってしまう事を「うっかりドーピング」と言います。

 しかし、たとえ「うっかりドーピング」だったとしても、結果として検査で
陽性と出てしまえば制裁の対象となり、競技大会における結果・記録の失効、
出場資格の停止などの厳しい措置がなされます。

 最近では2011年8月に、まゆ毛やヒゲなどの生育促進の目的で市販され
ている軟こうで、「テストステロン」という禁止薬物が含まれている薬品を、
ヒゲを生やす事を目的で使用した選手が、2年間の出場停止処分を下されてし
まった―という例がありました。

 スポーツファーマシストには、このような「うっかりドーピング」を未然に
防ぐという事が期待されています。