「血糖値が気になるあなたに 〜糖尿病を正しく知ろう〜」


向井田胃腸科内科医院 向井田 英明



 
糖尿病患者数
 平成28年の厚生労働省の国民健康・栄養調査で「糖尿病が強く疑われる者
(HbA1c 6.5%以上)」は1,000万人となった。20歳以上の男性の16.3%,女性
の9.3%である。令和1年の調査では男性19.7%,女性10.8%とさらに増加し
ている(令和2年,3年の調査は新型コロナ感染症のため中止)。

世界糖尿病デー(11月14日)
 糖尿病の予防,治療,療養を喚起する啓発活動を促進するために,国際連合
により2006年12月に制定された。この日はインスリンを発見したバンテイング
博士の誕生日である。シンボルマークは「ブルーサークル」で国連やどこまで
も続く「空」と団結の「輪」を意味する。キャッチフレーズは「糖尿病との闘
いのために団結せよ(Unite for Diabetes)」である。日本ではこの日を含む
1週間を全国糖尿病週間に制定し(今年度は11月13日〜11月19日),各地で糖
尿病の啓発活動が行われる。八戸市では八戸市総合保健センターのブルーライ
トアップと11月13日には八戸西病院で糖尿病講演会,11月19日には八戸市民病
院主催でWeb講演会が開催された。

糖尿病とは
 インスリンの作用不足(インスリン分泌低下,インスリン抵抗性)により血
糖値が上昇し種々の合併症を引き起こす病気である。

 健常人の血糖は,空腹時は低く食後は上昇しその後再び低下する。空腹時で
は70mg/dlを切ることはなく食後は140mg/dlを超えることはないと言われてい
るが,私見であるが通常80〜120mg/dlで推移していると考えている(平均血糖
は100mg/dlぐらい)。

 糖尿病の診断は血糖値によって行われ,@空腹時血糖126mg/dl以上A75g糖
負荷試験2時間値200mg/dl以上B随時血糖値200mg/dl以上CHbA1c 6.5%以上の
いずれかが確認された場合は「糖尿病型」と判定,別の日に行った検査にて糖
尿病型が再確認できれば「糖尿病」と診断する。

 糖尿病の合併症には失明の原因となる糖尿病網膜症,人工透析の原因となる
糖尿病腎症,足の切断の原因となる糖尿病神経障害があり三大合併症と呼ばれ
る。「しめじ」で覚える方法があり,し(神経障害),め(網膜症),じ(腎
症)である。これらは細小血管障害であるが,大血管障害である動脈硬化性疾
患も2〜4倍起こしやすくなる。また歯周病はほとんどの方が合併している。

 糖尿病治療の目標は健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持と寿
命の確保であるが,そのためには血糖コントロールが重要となる。血糖コント
ロールの目標値(HbA1c)としては,まずは「合併症予防のための目標」7.0%
未満をクリアする必要がある。可能であれば「血糖正常化を目指す際の目標」
6.0%未満であるがこれはかなり難しい。高齢者などで低血糖のリスクを避け
る必要がある場合には「治療強化が困難な際の目標」8.0%未満となる。

一無,二少,三多
 日本生活習慣病協会理事長の池田義雄先生が1991年に提唱した言葉である。
糖尿病治療の基本と考えられるので紹介する。一無(無煙,禁煙の勧め)。二
少(少食,少酒の勧め):常に腹七,八分目で塩分は7〜8g以下。3つの白
を控える(白米・白パンの白,食塩の白,砂糖の白)。食物繊維を豊富にとる。
1日の摂取量は日本酒で1合程度まで。三多(多動,多休,多接の勧め):1
日に20分の歩行を2回,体操・筋力トレーニングを各10分。休養をしっかりと
る。多くの人,事,物に接して創造的な生活をする。