早期発見で9割が治る!胃がん予防の基本
八戸市立市民病院 消化器内科 谷地 一真
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日本では年間約11万人が胃がんと診断され,身近で誰もが罹患しうる病気で
ある。胃の粘膜上皮から発生する悪性腫瘍で,多く(約99%)はピロリ菌の感
染が原因とされる。喫煙,食習慣(塩分・加工肉・漬物),放射線,EBウイル
スなどもリスク因子となる。近年全体の罹患率と死亡率は減少傾向だが,依然
として男女ともに罹患数は多い。2021年のデータでは部位別のがん罹患率で男
女ともに4位という結果であった。
胃がんは早期に発見できるかどうかで予後が大きく異なる。粘膜・粘膜下層
までにとどまる早期胃がんなら5年生存率は約90%に達するが,遠隔転移を伴
うステージ・では16%程度と大きな差がある。そのため「早期発見・早期治療」
が極めて重要である。
胃がんの診断については主に胃カメラが用いられ,病変の観察と生検による
確定診断を行う。バリウム検査(胃透視)も存在するが,精密検査は最終的に
内視鏡が必要となる。近年は画質向上やAI支援により早期がんの発見率がさら
に高まっている。またCTを行い病期を分類する。
胃がんの治療については病期に応じて主に以下が行われる。
・内視鏡治療(ESD):粘膜下層剥離術で早期胃がんの一部で適応となる。
・外科手術:腫瘍の位置によって切除範囲が決まる。
・薬物療法:進行例では延命目的が中心。近年は免疫チェックポイント阻害薬
も使用されるが,副作用(irAE)に注意が必要である。
・緩和治療:ステント留置やバイパス術で症状緩和を図ることがある。
胃がんを予防するためには,胃がんの最大の原因であるピロリ菌の除菌が鍵
となる。感染者と非感染者では発がん率に大きな差があり,10年間のフォロー
で感染者の2.9%に胃がんが発生したのに対し,非感染者からは発生しなかった
という研究もある。ピロリ菌は内視鏡所見や各種検査により診断し,1週間の
薬物治療で除菌が可能である。感染率は若年層で低下しているが,親から子へ
唾液を介した感染も起こるため注意が必要である。
最後に講座のまとめとして,40歳を過ぎたら定期的に胃がん検診を受けるこ
と,ピロリ菌がいれば早期に除菌すること,胃がんは早期で見つければ内視鏡
治療でほぼ治癒し,再発も少ないこと,放置すると予後は大きく悪化するため,
症状がなくても検診が重要であることを伝えさせていただいた。
ESD:endoscopic submucosal dissection
irAE:immune-related Adverse Events